技科大,切り紙で超伸縮性神経電極を開発

豊橋技術科学大学は,切り紙構造を用いた超伸縮性神経電極を開発した(ニュースリリース)。

デバイスの高い伸縮性と高い変形性は,これまでのセンサーやアクチュエータ,エナジーハーベスタといったエレクトロニクスの応用をさらに拡大することが期待される。特に,三次元的な形状を持ち,速くて大きな変形を示す臓器(例えば心臓)や組織といった各種の生体サンプルへの応用が期待される。

しかし,ゴムのような弾性材料を基にした従来の伸縮性デバイス(ストレッチャブルデバイス)では材料自体の特性によってデバイスの伸縮時に大きな力が必要だった。そのため,従来のストレッチャブルデバイスは,柔らかい生体サンプルに対して追従することはできず,また,生体の自由な変形や成長を阻害する可能性もあった。

柔らかい生体組織へのストレッチャブルデバイスの応用には,デバイスの低侵襲性や安全な計測を実現する上で伸縮に必要な力を最小限に抑えることが重要な課題であった。そこで,研究グループは切り紙構造を用いて,超伸縮性を実現したバイオプローブ(神経電極)デバイスを開発した。

切り紙構造は,硬く,伸縮性を持たない材料に対して適用することで、他の弾性材料を用いるより、むしろ高い伸縮性が実現できる。これは,切り紙構造における伸縮性が材料の伸縮ではなく,薄いフィルムの三次元的な曲げによって生じているため。そのため,伸縮に必要な力は弾性材料を用いた伸縮性デバイスと比較しても遥かに小さくなる。

予備実験として行なった,パリレンに微細パターンを施して製作した切り紙フィルムは,1,100%という革新的な伸縮性を実現した。また,次に製作した切り紙神経電極デバイスが,高い伸縮性と変形性といった特性を活かして,マウスの大脳皮質と拍動する心臓からの神経信号記録を実現した。

研究グループは,切り紙神経電極が長期における成長や病気などによる組織や臓器の表面積ないしは体積の増加・減少を伴う状況でも適用可能であると考えている。最終的にはこれまでにない新たな計測手法を実現し,成長やアルツハイマーに代表される脳の変形を伴うような病気についてのメカニズムの解明や治療に役立てていきたいとしている。

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