名古屋工業大学の研究グループは,従来材と比較して,内部欠陥が少なく,微細な組織を有する高品質な造形品の製造を可能とする積層造形(3Dプリンター)に特化した新規金属粉末の開発に成功した(ニュースリリース)。
3Dプリンターにおける,粉末床溶融法等の粉末の溶融および凝固を工程に含む積層造形法では,造形品中に形成される内部空孔や粗大かつ不均一な内部組織による品質や力学特性の低下,造形可能な金属種に制限があることが技術的な課題として挙げられる。
今回,研究グループは,鋳造アルミニウムなどの組織微細化に利用される異質核生成理論を積層造形技術に応用した。この手法は,母材金属と異質核粒子を混合し,母材金属の初晶に対して界面マッチングが良く,且つ,母材金属よりも高い融点を有する異質核粒子が母材金属の凝固時に結晶成長の核として働くことで,組織の微細化が達成されるもの。
今回の研究では,航空機部材等に用いられるTi-6Al-4V合金を母材金属とし,これに対する異質核粒子としてTiC粒子を選定して実験を行なった。
それぞれの粉末を予め混合することで作製した積層造形用金属粉末を新たに開発し,同粉末を用いて,粉末床溶融法により積層造形品を作製した結果,母材金属粉末のみで積層造形した従来品と比較して,①相対密度の向上,②初晶粒組織の微細化が確認された。
以上の結果より,今回開発した新規積層造形用金属粉末を用いることで,より高品質な積層造形品の製造が可能であるとともに,造形時に必要なレーザーの出力を低減させることも可能であることがわかった。
これにより,造形プロセスの省エネルギー化,あるいは低品位なレーザーを用いた造形でも高品質な造形体の製造が可能であることが示唆された。これは,今後の積層造形技術の普及,発展に大きく貢献するものだという。
この手法は,母材金属に合わせて異質核粒子を選定することで,様々な金属種・合金種を用いた積層造形法に幅広く適用可能であることが特長。今後は,純アルミニウムなど積層造形技術に応用が期待される他の金属あるいは合金について同様の効果があることを確認するとともに,添加する異質核粒子の形状やサイズ,添加量を最適化し,さらなる性能発揮を求めていくとしている。