九州大学の研究グループは,マイクロ波を用いて,ワイヤレスで選択的にスピン流を生成する技術の開発に成功した(ニュースリリース)。
エレクトロニクスデバイスの更なる高性能化・高機能化の観点から,スピン角運動量の流れであるスピン流を用いたデバイスが注目されている。電子は,自転に似た性質によるスピンと呼ばれる物理量を持っていて,電子が流れると,電気の流れに対応する電流と同時に,スピン角運動量の流れに対応するスピン流が流れることになる。
このスピン流をうまく制御することが,スピンデバイスを動作させるうえで最も重要な課題となる。研究グループはこれまでに,CoFe系の合金を用いると,熱により巨大なスピン流を生成できることを報告していた。
そこで今回,同物質にマイクロ波を照射することでスピンの集団運動を共鳴的に励起して,強磁性金属を効果的,且つ選択的に発熱させることで,高効率なスピン流生成を実現した。
強磁性金属の共鳴周波数は,材料や形状,外部磁場で調整可能なため,特定の周波数のマイクロ波を用いれば,選択的な加熱が可能になる。また,マイクロ波は空間を伝搬するため,配線の必要性がなく,更に,空間には使われていない膨大なマイクロ波が存在していることから,この素子を空間に置くことで未利用なマイクロ波を回収して動作するエナジー・ハーベスティングなスピンデバイスなどのへ応用が期待されるとしている。