東京大学と仏国立強磁場研究所の研究グループは,両国が保有する世界最高クラスの磁場発生装置「一巻きコイル磁場発生装置」を用いてマルチフェロイック物質CuCrO2における多彩な磁場誘起相の観測に成功した(ニュースリリース)。
「強誘電性」と「磁気秩序」を併せ持つ「マルチフェロイック物質」は将来の省電力メモリーを担うと期待され,近年急速に研究が進展している。その性質の根幹を成している特殊な磁気秩序は,複雑な磁気相互作用の競合「フラストレーション」に起因している。
このため,マルチフェロイック物質の本質を知る上で,そのフラストレートした磁気相互作用を詳細に理解することが必要不可欠とされてきた。
研究グループは,100テスラ以上の極限強磁場を用いることにより,新たに複数の磁場誘起相を観測した。この観測は,先行研究において用いられていた理論モデルに修正を促す結果となっており,その詳細な磁気相互作用の理解は今後新たなデバイスの開発・実用化へと繋がることが期待できる。
また,この研究成果を結実させたのは,日仏の研究施設間における人材の交流,実験手法の共有であり,今後日仏間による継続的な共同研究により,未開拓領域である100テスラ以上の研究が加速的に進展すると期待できるとしている。