京大ら,雷が大気中で光核反応を起こすことを発見

京都大学,東京大学,日本原子力研究開発機構,北海道大学らの研究グループは,雷が大気中で原子核反応(光核反応)を起こすことを突き止めた(ニュースリリース)。

雷は人間にとって身近な自然現象であるにも関わらず,発生の「きっかけ」には未解明な問題が多く残されている。近年,雷や雷雲は自然界における天然の加速器として働き,電子を光速近くまで加速できると指摘されている。

最近では,加速された電子が大気分子に衝突して放出される高エネルギーのガンマ線を,最先端の装置で観測できるようになった。特に,雷雲の上空から宇宙に向かって駆け上がる高エネルギーのガンマ線が人工衛星で検出されるようになり,地球からのガンマ線と呼ばれ,活発な研究の対象になっている。これら雷の高エネルギー現象の研究こそが,雷発生の秘密を解き明かす鍵と考えられている。

冬の北陸の日本海沿岸には毎年,強力な雷雲が押し寄せ,世界的にも数少ない恵まれた雷の観測場所になる。これまでにも研究グループは,雷雲や雷の高エネルギー放射を地上から観測してきた。その過程で,加速された電子からのガンマ線が,雷雲の通過に伴って数分間にわたり地上に降り注ぐ現象「ロングバースト」を既に発見し,雷の前駆現象として注目されている。

過去の観測を通して,この数分間の「ロングバースト」とは別に,1秒以下の短時間に強力なガンマ線が到来する「ショートバースト」という謎の突発現象があることを把握していたが,詳細は分かっていなかった。

研究グループは,地上に放射線検出器を設置し,2017年2月6日に新潟県柏崎市で発生した雷から,強烈なガンマ線のバースト放射(ショートバースト)を検出した。さらに35秒ほど遅れて,雷を起こした雲が検出器の上空を通過する際に,陽電子(電子の反物質)からの0.511MeV(イオンや素粒子のエネルギーの単位)対消滅ガンマ線の検出に成功した。

これらは,雷に伴うガンマ線が大気中の窒素と光核反応を起こした結果生じる,「中性子」と「窒素の放射性同位体が放出した陽電子」が起源と考えられ,理論的に予言されていた「雷による光核反応」の明確な証拠が得られたとしている。

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