産総研,酸化物半導体光電極の水素製造で最高効率達成

産業技術総合研究所(産総研)は,酸化物半導体光電極を用いた水分解による水素製造に関して,非常に高性能な積層光電極を開発した(ニュースリリース)。

人工光合成技術において,これまでに報告されている酸化物半導体光電極を用いて太陽エネルギーを水素エネルギーに変換する効率は低く(酸化物だけでは0.69%。高価な白金を複合したものでは1.1%),高性能システムの開発が望まれていた。

酸化物半導体はn型が多く,酸素を発生する側の電極として最適であり,塗布して空気中で焼成するだけで成膜できるので大面積化も容易。しかし,太陽エネルギーを水素に変換する太陽エネルギー変換効率は低く,実用化には一層の変換効率の向上が必要不可欠であった。

今回,3種類の半導体を積層した構造の酸化物光電極を作製し,高濃度の炭酸塩電解液を用いて水分解による水素製造を行なった。この光電極は導電性ガラスを基板として,1層目に酸化タングステン(WO3),2層目に酸化スズ(SnO2),3層目にバナジン酸ビスマス(BiVO4)となるように積層してある。

それぞれの層に対応した金属イオンを含む溶液をスピンコート法で塗布し,焼成して成膜した。この成膜法を用いることで多孔質の薄膜が作製される。BiVO4側から光を照射すると,BiVO4が520nmまでの可視光を主に吸収する一方で,WO3は効率的な電子移動を担い,その間のSnO2は界面での電荷再結合のロスを低減すると考えられる。

3種類の半導体を積層した光電極を用いて高濃度の炭酸塩電解液中で水分解反応を進行させると,太陽エネルギー変換効率は0.85%であった。さらに,この光電極を2枚重ねて光閉じ込め構造として,同様に高濃度炭酸塩電解液中で水分解を行なうと,太陽エネルギー変換効率は1.35%に向上した。

これは貴金属を添加していない酸化物光電極を用いた場合の効率としては,従来報告されている最高値の2倍程度で,世界最高値。この積層酸化物光電極を用いたシステムによって水が分解されて,水素の泡が対極から,酸素の泡が光電極から生成される。現状の材料でも水分解の電解電圧を4割以上低減でき,水分解による水素製造の低コスト化につながる。

光電極の太陽エネルギー変換効率を向上させるには,光電流を増大させつつ,補助電源電圧をさらに低下させる必要があり,より長波長の可視光を十分に利用できる,伝導帯準位が負に大きい,電荷分離効率が高いという3つの特徴を持つ半導体の開発が重要となる。

そのため,産総研では無数にある複合材料やその組み合わせの中から短時間で有望な半導体や最適な多層膜構造を自動探索できるロボットシステムを独自に開発して高速スクリーニングを行なっている。また,材料探索とともに光電極調製法を改良して太陽エネルギー変換効率を向上させていく。

さらに高濃度炭酸塩は,炭酸イオンが酸化還元を繰り返して触媒のように水分解反応を促進していると考えられるが,その詳細なメカニズムを解明し,今後,水分解システムの高効率化につなげたいとしている。

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