熊本大ら,光で抗菌作用をコントロールできる銀ナノ粒子を開発

熊本大学と慶應義塾大学,大日本塗料らの共同研究グループは,三角プレート状の銀ナノ粒子(銀ナノプレート)を金でコーティングし,凝集しないよう安定した分散性と安全性を高めるとともに,抗菌作用を低く抑えたナノ粒子を作製した(ニュースリリース)。

銀は様々な細菌の増殖を抑制するため,主に銀イオンあるいは銀ナノ粒子の形で除菌スプレーなどの抗菌剤として使われている。薬剤耐性菌に対しても抗菌作用を示すため,抗生物質が効かない感染症にも効果があると期待されているが,その量が多いとヒトの細胞にも毒性を示すほか,銀ナノ粒子は凝集しやすい性質のため不安定で,抗菌作用がすぐに失われてしまうという欠点があった。

そこで,研究グループは,三角プレート状の銀ナノ粒子(銀ナノプレート)を金でコーティングし,凝集しないよう安定した分散性と安全性を高めるとともに,抗菌作用を低く抑えたナノ粒子を作製した。

このナノ粒子にパルスレーザー光を照射すると,銀ナノプレートは瞬間的に加熱されて球状に変形し,金コーディングのわずかな隙間から銀イオンが放出されて抗菌作用が現れた。つまり,光照射により抗菌作用をコントロールできることが明らかになった。

この技術は,例えば金コート銀ナノ粒子が体内の広い範囲に分布していたとしても,抗菌作用を発揮して欲しい部位(感染部位)のみを光照射することで,他の正常部位には傷害を与えずに,光照射部位のみで抗菌作用を発揮させることができる。これは,副作用の少ない感染症治療となる可能性がある。

また,ナノ粒子は細胞内に取り込まれやすいという性質をもつので,細胞の中に寄生している細菌(例えば,結核菌やレジオネラ菌といった抗生物質がなかなか効かない細菌など)の近くまで到達させることができ,このような細菌にも効果的に抗菌作用を示すのではないかと期待されるとしている。

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