東工大,オルト-パラ核スピン異性体間の光学遷移を検出

東京工業大学の研究グループは,孤立した環境にある分子のオルト-パラ異性体間の光学遷移の検出に初めて成功し,その発現メカニズムを理論及び実験的に明らかにした(ニュースリリース)。

180度の回転対称性を有するすべての分子の量子状態は,等価な配置にある核スピンの向きによって,オルト状態とパラ状態の2つに分類され,これをオルト-パラ対称性と呼ぶ。一般に,光を使ってこの2つの状態間を遷移させることはとても難しいので,これまで両者は核スピン異性体として,あたかも独立した別の分子であるかのように見なされてきた。

オルト-パラ遷移の検出実験には,塩素核が分子骨格の両端の等価な位置にある塩化硫黄分子(S2Cl2)を選んだ。この分子については,研究グループが以前に観測したマイクロ波スペクトルの解析から,。
オルト-パラ状態を混合させる相互作用を含んだ分子ハミルトニアンモデルを提案していた。

今回の実験では,真空容器中のマイクロ波共振器内にS2Cl2分子を導入し,この理論モデルで予想した周波数領域を調べたところ,通常の遷移の1,000分の1の強度を持つ超微細構造分裂(エネルギー準位の小さな分裂)した回転スペクトルを7本検出し,オルト-パラ遷移として同定した。

観測された周波数と強度は理論予想と良く一致したため,ハミルトニアンモデルの正しさ,すなわち,オルト-パラ遷移の発現起源を立証することができた。

この研究によって,オルト-パラ異性体分子一般について,自然発光過程による変換速度を定量化する道が確立できた。オルト-パラ対称性は物理学の基本原理のひとつである,等価粒子の交換対称性に基づいているので,自然科学の広い分野で重要な役割をしている。

たとえば,電波天文学で発見されている星間分子の異常オルト/パラ存在比のような宇宙物質進化の未解決問題を解明する手がかりになると期待されるとしている。

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