KDDI研,モバイル無線信号の大容量光ファイバー伝送に成功

著者: sugi

KDDI総合研究所は,大容量のモバイル無線信号波形をデジタル信号に変換することなく直接光ファイバーで高品質に伝送可能な大容量・長距離化技術を開発し,これまでの記録の2.5倍となる大容量無線信号の長距離光ファイバー伝送実験に成功した(ニュースリリース)。

モバイル通信の高速化,大容量化には,高い無線周波数帯の利用が不可欠。一般に,周波数が高くなるほど,大気伝搬時の減衰が大きく,また電波の直進性も強いため遠くには届きにくくなる。そのため,今後,大容量無線サービスを展開するため,サービスエリアの狭い多数の基地局(アンテナ)を設置することが予想され,設置制約の少ない小型,省電力の基地局構成が必要になる。

さらに,無線基地局を収容する光アクセス回線には,主にモバイル無線信号の波形をデジタル化して伝送する方式が用いられているが,5Gでは50%データ圧縮技術を利用しても100Gb/s近い伝送レートが求められ,無線基地局を収容する光アクセス回線の大容量化も必要となるという問題がでてくる。

現在,3GPP(Third Generation Partnership Project)で基地局の機能分割を変更することで,回線容量を削減する検討が行わなれているが,基地局間連携動作性能は劣化してしまう懸念がある。

これら無線および光アクセス回線の課題を同時に解決し,ユーザーに大容量無線サービスを提供する方法の一つとして,モバイル無線信号の波形をそのまま光ファイバーで伝送するRoF(Radio-over-Fiber)伝送方式が考えられるが,一般に,デジタル伝送に比べて,光伝送に起因する信号劣化を受けやすい性質がある。

例えば,帯域の広い無線信号をC-bandの光波長を使ってRoF伝送しようとすると,一部の周波数帯域でパワーフェーディングの影響を受け,伝送容量と伝送距離を同時に拡大することができないという問題があった。

しかし,RoF伝送方式は,シンプルな強度変調-直接検波(IM-DD)構成でありながら,無線信号の高い周波数利用効率での光伝送が可能なため,光送受信機に必要な帯域を削減でき,従来の光ファイバーや光部品の活用が期待できる。また,伝送後のデジタル信号復調処理が不要となり,アンテナサイト設置機器の小型化・省電力化が可能となることから,迅速なサービス展開にも期待ができる。

従来は無線信号を光送信器で光の強度のみを変調していたが,今回,新たな光送信器構成において,パワーフェーディングの影響を受ける周波数帯の信号に対して光の強度ではなく位相を変調し,強度変調された光信号と位相変調された光信号を偏波多重した。

これにより,光ファイバー伝送後は一般的なIM-DD方式で適用されている受信構成で,全ての周波数帯の無線信号を受信することができる。伝送実験では,20kmのシングルモード光ファイバーを用い,64値直交振幅変調(64QAM),チャネル帯域幅1.2GHzの直交周波数分割多重(OFDM)信号を周波数軸上に等間隔に並べ,21GHzまで拡がる広帯域無線信号を1550nmの光波長1波で一括伝送した。

従来の方式では半分以下のチャネルしか伝送できなかったが,これまでの記録の2.5倍となる大容量無線信号のRoF伝送実験に成功した。今回達成したモバイル通信の速度は63Gb/sで,次世代移動通信システム「5G」で想定される最大通信速度20Gb/sの3倍以上となる。また,基地局設備の大幅な小型・省電力化が可能となるため,これまで以上にアンテナ数が増大する5G以降において,大容量・高品質なモバイル通信を支える技術として期待できるとしている。

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