NIMS,サブナノスケールで磁気構造を可視化

物質・材料研究機構(NIMS)は,ナノメートル以下のスケールで物質の磁気構造を観察することができる高分解能ローレンツ顕微鏡法を世界で初めて確立した(ニュースリリース)。

近年,急速に進展している次世代磁性材料,特にスピントロニクスの分野においては,ナノスケールで変化する磁場をより高空間分解能で可視化する技術の開発が求められている。現在,直接観察による磁気イメージングで有力な手法の一つとして,透過電子顕微鏡を用いたローレンツ顕微鏡法がある。

しかし、この方法で用いる特殊な電子レンズ (ローレンツレンズ) は球面収差や色収差が大きいため,磁気構造の分解能は2–10nm程度に留まっていた。ナノスケールの磁気構造を正確に知るためには1nm以下の空間分解能が必要となる。

研究グループは,球面収差補正装置と電子線単色化装置を同時に組み合わせて用いることで,ローレンツレンズの球面収差等の高次収差と色収差を大幅に低減し,0.6nm以下のサブナノスケールの空間分解能を有する高分解能ローレンツ顕微鏡法を世界で初めて確立することに成功した。

希土類金属ジスプロシウム(Dy)では,スピントロニクスへの応用が期待される複数の磁気相が存在することが示唆されている。この手法を用いてこの磁気相を観察した結果,無磁場下で形成される磁気ソリトンの存在が明らかになった。

また,複数の磁気相が外部磁場により誘起され共存する磁場誘起ナノスケール磁気相分離を可視化することに成功した。今回明らかになったナノスケールの磁気微細構造と磁気相分離は,スピントロニクスの研究分野において重要な基礎的知見であると考えられるという。

次世代のスピントロニクスデバイスの研究開発においては,磁性体内部で形成されるナノスケールの磁気構造を制御することにより,新しい機能特性の発現を目指す研究が活発に行なわれている。この研究で開発された,サブナノスケールで磁気構造を可視化するローレンツ顕微鏡法は,これらの研究開発を加速させるものだとしている。

キーワード:

関連記事

  • 【GW読書におすすめ】身近な光技術を感じる書籍「ひも解くひかり 身近なひかり」

    連休中、少しゆっくりとした時間を過ごしてみてはいかがだろうか。青い空、鏡に映る自分、写真、通信、生命の営み――私たちの身の回りには、あらゆるところに光がある。日常では当たり前に受け止めている現象も、その背後には反射、屈折…

    2026.05.02
  • 東大、細胞内の構造と微粒子の動きを同時観察する顕微鏡を開発

    東京大学の研究グループは、前方散乱光と後方散乱光を同時に定量する「双方向定量散乱顕微鏡」を開発した(ニュースリリース)。 ラベルフリー顕微鏡として広く用いられる定量位相顕微鏡(QPM)は、試料の屈折率分布に起因する前方散…

    2025.11.28
  • 東北大ら、円偏光を用いた共鳴非弾性X線散乱による磁区識別法を開発

    東北大学、早稲田大学、大阪公立大学は、円偏光を用いた共鳴非弾性X線散乱(RIXS)による新たな磁区識別法を開発した(ニュースリリース)。 交替磁性体は全体としての磁化がゼロでありながら、スピンの分極した電子バンドを持つた…

    2025.11.26
  • 筑波大,神経細胞の構造を10倍の精度で3次元計測

    筑波大学の研究グループは,神経細胞の微細構造を高速かつ高精度に3次元計測する技術を開発した(ニュースリリース)。 脳は一つの神経細胞,またはシナプス結合を基本単位として構成され,それらの形態や構成要素の変化が情報処理の基…

    2025.09.17
  • 東大,球形のナノダイヤモンドを低温・低圧下で合成

    東京大学の研究グループは,原子分解能透過電子顕微鏡を用いて,ダイヤモンド骨格であるアダマンタン(Ad)の結晶に電子線照射することで,ナノサイズの球形のダイヤモンドを合成することに成功した(ニュースリリース)。 ダイヤモン…

    2025.09.12

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア