マクセルは,精密電鋳加工技術 EF2(Electro Fine Forming:EF2)による有機ELディスプレーパネル蒸着用高精細ハイブリッドマスク(有機ELパネル用ハイブリッドマスク)を開発した(ニュースリリース)。
近年,スマートフォンなどで有機ELディスプレーパネルの採用が増えている。パネルの高精細化・大型化にともない,製造上のキーデバイスである有機ELパネル用蒸着マスクには,精密なパターン加工,低熱膨張変形性が求められている。
今回同社は,熱膨張特性に優れるインバー材フレームにEF2で形成した高精細マスク部を一体化させたフレーム一体型ハイブリッドマスクを開発した。現在の有機ELディスプレーパネルは発光セルを間引いて画素が形成された,リアルRGB換算で350ppi~380ppiレベルのものが多く,リアルRGB 400ppi以上を実現する高精細の蒸着マスクのニーズがあった。
開発したEF2によるマスク形成では開口部の高精度化が可能で,マスク厚の薄さは8μm,有機ELディスプレーパネルの高精細化(リアルRGB 400ppi以上)を実現することができるという。
さらに同社は,熱膨張特性に優れるインバー材フレームに,EF2で形成した高精細マスク部を一体化させることで,熱膨張による変形を抑え,蒸着装置への容易な装着を可能にした。
現在主流のエッチング加工によるマスクは,複数枚をミクロン単位の位置精度で貼り合わせて蒸着装置にセッティングする必要があり,パネルメーカーは高度な貼り合わせ技術が求められる。一方,開発した有機ELパネル用ハイブリッドマスクではフレーム一体型のマスクを供給することで,パネルメーカー側の工数を削減することができる。
このハイブリッドマスクは,ジャパンディスプレイ(JDI)と共同開発したもの。同社は2018年秋より,JDIの高精細有機ELディスプレーパネル向けに供給を開始する。また,今後,JDIおよび高精度蒸着に優れる縦型蒸着機メーカーとの3社による協業を進める予定。