名大,るつぼの内部の状態をAIで予測

名古屋大学は,次世代半導体として注目されている新素材SiC開発期間を圧倒的に短縮するため,材料を合成する装置内部の現象を瞬時に予測し,可視化するシステムを開発した(ニュースリリース)。

研究グループでは,SiCの高品質化技術を確立したが,さらなる大型結晶を実現するプロセス開発を行なう必要がある。しかし,多数のパラメータの組み合わせが無数にあるため,最適条件を見出すことが難しいことと,合成装置の内部を直接観察したり,直接制御したりすることの難しいという問題がある。実際に,SiCの高品質結晶成長技術では,完全に閉鎖された装置内で,高温液体の温度や流れを制御する必要がある。

高品質SiC結晶溶液成長法は,るつぼにSiCの原料となる高温金属液体を入れ,そこに専用のスティックを浸漬させ,その先端に高温液体中から結晶を成長させる。このとき,成長温度は約1800°Cに達する。この方法で高品質結晶を作製するためには,高温液体中の温度分布,元素組成分布,液体の流れ分布を綿密に制御する必要がある。

これらの分布を制御するためには,るつぼやスティックの位置や回転,るつぼの温度や形状など,さまざまなパラメータを考慮して,最適な条件を見出す必要があるが,装置の内部を見ることはできない。

研究では,人工知能技術である機械学習を用いて,装置内部の状態を瞬時に予測するシステムを開発した。このシステムは非常に正確に予測でき,予測には0.1秒程度しか必要としない。この予測システムを用いると,装置内部の様子を短時間で予測することができ,そこから最適条件を効率よく見出すことができる。

実際に,研究グループはこのシステムを用いて,高品質SiC結晶成長条件の探索に応用し,高品質結晶を従来の10分の1以上の短期間で実現することに成功している。これにより,プロセス開発のスピードは格段に高速になるという。

このシステムを用いると,装置の内部や高温液体の状態をリアルタイムに知ることができる。さらに,プロジェクションマッピング技術により,この内部映像を装置そのものに投影できる。これにより,臨場感のある映像を通じて,オペレータは内部状態を即座に知りながら,様々なパラメータを制御することができる。

この研究により,高品質SiCの開発が飛躍的にスピードアップする。また,この手法は,SiCだけではなく,現在,名古屋大学を中心に研究開発が進んでいるGaNに関するプロジェクトにおいても応用ができる。さらに,液体に限らずガスなどの流体を扱う結晶成長プロセスや,熱拡散を扱う熱処理プロセス,そのほかにも鋳造や金属加工などにも応用が可能だとしている。

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