8K内視鏡を開発するカイロスは9月29日,8K硬性内視鏡システムの開発を終え,10月より受注を開始するとして発売記者会見を行なった。
同社が開発した8K内視鏡は腹腔鏡手術に用いる硬性内視鏡。腹腔鏡手術においては,内視鏡を担当医師が保持している必要があるため,小型軽量化が重要となる。同社では2013年に2.5kgだったカメラヘッドを今回370gまで軽量化することに成功し,実際の手術で十分使用できると判断した。
8KのCMOSセンサーはブルックマンテクノロジ製。単板のデュアルグリーン方式となっている。もともと8Kはテレビ放送用として開発されてきた経緯があるため,今回同社は小型軽量化のために,放送に必要な回路や機構を可能な限り外すなどして簡略化したほか,廃熱用のファンを廃し,代わりに同軸ケーブル内に吸気と排気用パイプを設けて本体内を換気する独自のシステムを採用した。また,照明の熱でレンズを暖めることで鏡筒が曇らないのも特長となっている。
システム構成はカメラヘッドの他,同社製のカメラコントロールユニット(CCU),300Wキセノン光源,2Kレコーダ,アストロデザイン製の8Kレコーダ,ビデオコンバータ,シャープ製の70インチ8Kモニターから構成される。価格は6,000万円。同社では販売だけでなく,リース等も視野に入れて準備をしているという。
これまでの内視鏡は解像度が低かったこともあり30インチ程度のモニターを用いていたが,今回の8K内視鏡は70インチの大型モニターを用いることで,術野をより詳細に見ることができる。臨床試験ではこれまでの内視鏡では見ることができなかった神経も見分けることができたなど,医師からも高い評価を得たという。
また,その解像度からデジタル顕微鏡としての役割も期待できる。腹腔鏡手術はもちろん,開腹手術でも従来医師が拡大鏡を使っていたような場面で活用すれば,医師の疲労軽減やスムーズな手術の進行をサポートできるほか,切開創も小さくなることが期待できる。実際に臨床試験では心臓の冠動脈手術のほか,子宮頸がんの子宮全摘手術にも応用して効果を実証した。
同社会長の千葉敏雄氏は「8K以上の解像度があっても人間の眼や脳は飽和して違いが分からない。その意味でこの製品は究極の内視鏡と言える。質感や奥行き感など,異次元の域に達することができた」として自信を見せ,「将来的には脳外科のほか,神経やがんの手術において,正常細胞と疾患部との境界の区別などにも応用が広がるだろう」としている。
同社では3年後に硬性内視鏡のシェアの2割となる300~400台を年間の販売台数としたいとして,既に全国各地の医療機器販売商社と代理店契約を結ぶなど,積極的な拡販を始めている。また,シャープも同社に8Kのモニターの納入を開始したことをアナウンスしており(ニュースリリース),8Kの医療市場の今後に期待を見せている。