NEDOプロ,最高伝送密度の光送受信器を開発

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクトにおいて,技術研究組合光電子融合基盤技術研究所(PETRA)と富士通は,小型で大容量化する光送受信技術により,従来の約2倍となる世界最高伝送密度約400Gb/s/㎠でデータ伝送するシリコンフォトニクス光送受信器を開発した(ニュースリリース)。また同時に,4値パルス制御で高速光信号を発生する光変調伝送技術も開発し,従来よりも40%少ない消費電力で1チャンネル56Gb/sという高速データ伝送を可能とした。

従来の光送受信器では,光回路に搭載できるレーザー素子のサイズ,駆動電子回路のチャンネル数が構造上制限されるため,光回路のサイズ・容量が制限されていた。また,光送受信器を高密度化すると,送信器と受信器間の距離が近くなり,信号の電気的な干渉が発生するため,この影響を抑えることが課題だった。

8mm×9mmで400Gb/s動作が可能な小型シリコンフォトニクス光回路は,16個の光変調器を配列した光送信部と,16個の受光器を配列した光受信部で構成される。PETRAではこれまで,シリコンフォトニクス上に光回路の光源であるレーザー素子を複数搭載する技術を開発しており,今回,それを初めて光送受信器に適用した。

光回路の光源として搭載するレーザー素子の端子構造と,駆動電子回路を搭載する端子構造が異なるため,これまで単純に一つの回路として形成することは困難だった。今回,レーザー素子搭載端子をリフトオフにより形成することで,この2種類の端子をシリコンフォトニクス上に形成する技術を確立した。また,素子やデバイスが互いに干渉しないよう,光回路の構成を工夫し,チップサイズを最小限にしながら,大容量を実現した。

光送受信器を高密度に形成するため,2次元アレイ状の高密度な端子を,高速かつ高密度に電気信号を通すことができるガラスセラミックインターポーザを介して駆動電子回路に接続し,駆動電子回路でガラスセラミックインターポーザとシリコンフォトニクス光回路をブリッジ状に接続する実装構造を開発した。

光回路の送信部と受信部間の電気的な干渉による受信性能の劣化については,送信部と受信部間にシールド構造を導入して電気的干渉を抑制し,さらにブリッジ実装構造の特長である高密度配線を活かしてガラスセラミックインターポーザ内の配線を工夫することでノイズを除去して電源の品質を向上した。

また,光送受信器をさらに高速化するための技術として,4つの電圧値のパルス振幅で制御する方式を用いて,1Gb/sあたり1.6mW(従来比40%減)の消費電力で56Gb/sの高速光信号を発生するPAM4光送信器技術も同時に開発した。PETRAではこれまで,電力を消費しない受動素子で構成した帯域補償回路による光送信器を開発しており,この光送信器とそれを駆動する電子回路とをはんだバンプにより直接電気的に接続することで,回路の負荷を低インピーダンスにし,高速かつ省電力動作を実現した。

研究グループは今後,開発した光送受信器技術を光モジュールに適用し2019年度の実用化を目指す。また,NEDOプロジェクトにおいては,開発した技術を高密度の光送受信器に適用することにより,光送受信器のさらなる高密度化・省電力化の実現を目指すとしている。

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