東京大学の研究グループは,CRISPR–Cas9システム(ゲノム編集技術)を用いてゲノムにコードされた遺伝子の発現を強力に光操作する技術を開発することで,iPS細胞を神経細胞へ光刺激で分化誘導することに成功した(ニュースリリース)。
この技術を応用して神経細胞への分化に関係したiPS細胞のNEUROD1遺伝子を光操作し,iPS細胞を神経細胞に分化できるか検証したところ,Split-CPTS2.0を用いると,従来技術(CPTS)と比べて860倍強く,NEUROD1遺伝子の発現を光刺激で活性化できることが分かった。
従来技術(CPTS)ではNEUROD1遺伝子の発現が十分でないため,iPS細胞を分化させることはできなかったが,開発した技術ではその効率が著しく高いため,光刺激により,iPS細胞を神経細胞に分化できることが分かった。
従来の光操作技術では転写活性化の効率が低いため,増殖や分化といった細胞機能を光で制御する応用への妨げとなっていた。この新技術により,iPS細胞から神経細胞への分化だけでなく,様々な細胞機能や生命現象の光操作に関する応用が大きく広がることが期待されるとしている。