水処理へのUV-LED応用が加速 ─水ingがUV-LED水消毒装置を開発

水ingのUV-LED水消毒装置に搭載されている光源の波長も280 ~285 nmとしているが,「実際に決まったものではない」(同社)としており,実用化に向けては装置仕様に適したUV-LEDデバイスの選択を進める考えを示している。

装置化するうえで要求されているのは,UV-LEDデバイスのさらなる高出力化と高効率化,長寿命化だ。エネルギー変換効率に関して言えば,従来ランプとの比較を見ても,低圧ランプの35~40%,低圧高出力ランプの30~35%,中圧ランプの10~20%のそれぞれに対してUV-LEDは<1~4%と,その差は極めて大きい。

「投入電力を大きくすると,高出力を得ることができるが,エネルギー変換効率と寿命が低下する」(同社)というのが実情で,LEDの本来のアドバンテージである省エネ性能が低下するという課題がある。このため,現状のUV-LEDデバイスのさらなる仕様向上が期待されている。

水処理用途における従来ランプとUV-LEDの特性比較(出典:「造水技術ハンドブック,」(一社)造水促進センター,提供:小熊氏)
水処理用途における従来ランプとUV-LEDの特性比較
(出典:「造水技術ハンドブック<追補版>,」(一社)造水促進センター,提供:小熊氏)

今回水ingによる装置開発の発表は,水殺菌市場におけるUV-LEDの需要拡大の可能性を示すものとなった。今後,参入企業によるUV-LEDを搭載した水処理装置の開発機運は高まっていくものと考えられているが,装置化するうえで,標準化・規格化の動きも気になるところだ。

これについて,小熊氏は「いま議論を進めているところであるが,現時点では国際的なコンセンサスはえられていないのが実情だ。例えば,米国で売られている家庭用浄水器に関していえば,米国の浄水場用の紫外線装置で性能を評価するときと同じ方法がとられている。つまり,従来の水銀ランプを使った装置の評価基準を踏襲している。

当面,実務上ではこの方法が良いと考えているが,学術的には照射している波長が異なるので,今後装置メーカーがそれぞれ異なる波長のLEDを搭載した水処理装置を開発されたとき,企業ごとに波長が統一されていないものであったり,異なる複数の波長を融合させたものであったりした場合,照射しているエネルギー量を従来のランプと同じ評価方法で計測するのは無理があると考えている」と語る。

現在は,従来ランプの性能に対してUV-LEDの性能を比較する方式が一般化されているが,将来的にはUV-LED搭載装置に対する,新たな評価基準を規格化する必要があるとしている。

富士キメラ総研によると,UV-LEDパッケージ市場は2015年が60億円だったが,2020年には830億円になると予測している。UV-LEDに代替可能なアプリケーションは多岐にわたるが,そのうちの一つである水殺菌市場は大きいものと考えられている。今回の水ingに代表されるように,既に対応装置の実用展開が見えているが,こうした中にあって,より高効率なUV-LEDの実現に対する期待は増している。今後の水殺菌市場を巡るUV-LEDとその関連機器の開発動向が注目される。◇

(月刊OPTRONICS 2016年6月号掲載)