東北大学と東京大学は,超伝導材料や電池材料として知られているスピネル型酸化物LiTi2O4の表面について,その原子配列と電子状態を解明することに成功した(ニュースリリース)。
LiTi2O4は,スピネル構造の金属酸化物としては唯一の超伝導体で,比較的高い超伝導転移温度を示す(超伝導転移温度13ケルビン(マイナス260℃))興味深い物質として知られている。しかし,原子レベルで平坦な試料を作ることが難しく,表面における超伝導状態は,原子スケール分解能では調べられていなかった。
また,この物質は,リチウムイオン電池材料の候補としても知られている。リチウムイオン電池では,充放電の際に,リチウムイオンが電極表面を必ず通過する。したがって,電極表面の原子配列が,電池性能に極めて大きな影響を与える。
しかし,金属酸化物電極表面の原子配列は未解明で,さらなる性能向上に向けて,原子レベルでの理解が必要となっている。そこで研究グループは,走査型トンネル顕微鏡(STM)と,高品質な薄膜作製手法であるパルスレーザー堆積法が連結した複合装置を独自に開発してきた。
そして,SrTiO3単結晶基板上にLiTi2O4エピタキシャル薄膜を作製し,一度も大気に触れさせずにSTMを用いてその表面を原子スケール空間分解能で観察した。大気に触れさせないことで,非常にきれいな表面を維持しつつ観察することが可能となった。その上で,計算機シミュレーション結果と比較した。
その結果,最表面にチタン原子が周期的に並んでいることや,表面の超伝導ギャップやコヒーレンス長などの物性値が,固体内部とは異なっていることを明らかにした。
今回,三つの元素からなるスピネル構造について,原子像観察,構造決定,そして電子状態評価にはじめて成功した。このような研究から,超伝導現象の起源や,電解質との界面がどのように形成されているのか理解が深まり,新超伝導体開発やリチウムイオン電池特性向上へつながることが期待されるという。