東大ら,分子のスピン状態の制御に成功


東京大学と物質・材料研究機構(NIMS)の研究グループは,金表面に吸着した鉄フタロシアニン分子に走査トンネル顕微鏡の針を近づけ,鉄原子の位置をサブオングストロームスケールで制御することで,分子のスピン状態を可逆的に変化させることに成功した(ニュースリリース)。

その背後にあるメカニズムは,近藤効果とスピン軌道相互作用の拮抗。分子内部の鉄に局在したスピンが近藤効果によって生じる量子多体状態をとるか,スピン軌道相互作用による異方的なスピン状態をとるかは,分子と金表面の相互作用によって決まる。

STMの針による分子操作でこの相互作用を精密に変調することで,2つの状態間の量子相転移を実現し,それが分子の電気伝導特性の変化によって検出できることを実験・理論によって初めて明らかにした。

分子操作によってこのような量子相転移を制御・観測した例はこれまでにない。この研究成果は,量子多体現象に対する理解の深化や,単分子デバイスの新たな動作機構につながるものだとしている。

その他関連ニュース

  • 東北大ら,波と光が強結合した状態を室温で実現 2025年02月04日
  • 東大ら,光捕集能で電子スピンを効果的に超偏極 2025年01月29日
  • 東北大ら,VCSELのスピン制御で偏光スイッチ実現 2025年01月20日
  • 東大,円偏光照射で合金膜のスピン偏極電流を反転 2025年01月15日
  • 東北大ら,従来比約5倍増強の光磁気トルクを観測 2025年01月15日
  • 名大ら,テラヘルツ波⇒スピン流への変換機構を実証 2024年12月19日
  • 東大ら,新規スピントルクダイオード効果を発見 2024年12月06日
  • 京大ら,THzで超高速スピンスイッチング動作を発見 2024年10月28日