KDDI研,8Kマルチアングル映像をリアルタイム伝送

KDDI総合研究所は,マルチアングル映像に対応した8Kリアルタイムエンコーダの開発に世界で初めて成功し,8Kマルチアングル映像のリアルタイム伝送を実現した(ニュースリリース)。

マルチアングル映像とは例えばサッカーの競技会場に置かれた複数のカメラで撮影された映像をまとめて配信し,自分の好きなアングルの映像体験ができるもの。またフリーナビゲーション映像とは,競技会場で走り回るサッカー選手や審判,ボールなどの追跡情報をマルチアングル映像に加えて配信することで,ゲームプレイヤー感覚で映像体験ができるもの。

これらは非常に魅力的な映像体験だが,複数の4K/8K映像配信を低コストで実現するために圧縮効率の大幅な改善が求められていた。これに関連し,同研究所は2014年,H.265|HEVCマルチビュー拡張方式に準拠した4Kリアルタイムエンコーダの開発に成功している。成功当初は30fpsの4K映像を対象としていた。

しかしながら,8Kマルチアングルともなると膨大なデータ量や高フレームレートへの対応を見据えた符号化性能の改善が不可欠だった。さらに8K解像度となることで膨大なCPUリソースが要するという,8Kリアルタイムエンコーダに特有の技術課題が残されていた。

今回,エンコーダ制御最適化技術と処理速度改善技術の考案・導入により,H.265|HEVCマルチビュー拡張方式に準拠した8Kリアルタイムエンコーダの開発に世界で初めて成功した。

符号化性能については,実験で扱った8Kスタジアム映像(実際にサッカーの試合を4台の8Kカメラで撮影)の特徴を分析し,選手領域の分布を考慮したブロック分割と予測方式選択を導入することで視聴品質を損ねることなく,4台の8Kカメラによる60fpsのマルチアングル映像を160Mb/sに圧縮できることを確認した。比較として8K映像を伝送する現行技術では4台で320Mb/sの帯域を必要としていたため,1/2の圧縮率(2倍の圧縮性能)に相当する。

さらに,CPUごとの符号化タスクの割当てを,画面間の動き量を基準に動的に行なうメカニズムを新たに導入した結果,単純な並列処理に比べて所要のCPUリソースを1/4に低減することに成功した。

同研究所では今後,2018年度中の実用化を目指すとともに,120fpsの高フレームレートへの対応や更なる圧縮効率の向上も進めていく。

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