東芝は,インキュベータ内で培養する細胞集団の蛍光像を,対物レンズを用いることなく可視化するイメージング装置を技術開発した(ニュースリリース)。
iPS細胞の発見に代表される細胞生物学の発展に伴い,細胞の培養中の観察が重要となっている。従来,これらの観察には対物レンズを使用した蛍光顕微鏡が用いられていたためレンズやフィルタなどの光学系部品の小型化が難しく,通常のインキュベータ内で用いるには適していなかった。
また,観察のたびにインキュベータから蛍光顕微鏡に細胞サンプルを搬送する操作は,不純物混入の要因となっていたため,細胞集団の蛍光像をインキュベータの中で,より簡単に取得できる新しい技術の開発が望まれていた。
同社は,対物レンズではなくCMOSイメージセンサーを用いて細胞を観察する手法に着目し,CMOSイメージセンサーの上に特定波長の光を除去するフィルタを形成することで,細胞集団の蛍光像を可視化するイメージング装置を技術開発した。
これまで学会などで提案されている類似技術では,10μm程度の一般的な大きさの細胞を判別するために,画像処理による高解像度化を行なう計算機が必要だった。同社は,トレードオフの関係にあるフィルタ性能と空間分解能の両立を独自の最適設計で実現し,空間分解能を従来の3分の1となる世界最小の10μm未満に改善した。
また,観察の対象となる細胞の核を蛍光染色した細胞集団の蛍光像をインキュベータ内の蛍光イメージング装置で取得することに成功した。
このセンサーモジュール上で細胞培養を行なうことで,任意のタイミングで蛍光の画像を取得・送信することができるため,開発品はいつでも遠隔でインキュベータ内の細胞の様子を簡単に観察することができる。また,装置の小型化が可能になるため携帯性にも優れており,屋外でも活用することができるとしている。