東工大ら,トポロジカル絶縁体に強磁性を付与

東京工業大学,東京大学,分子科学研究所,広島大学,ロシア・スペインの理論グループらは共同で,トポロジカル絶縁体の表面近傍に規則的な強磁性層を埋め込むことに成功し,さらに室温であっても強磁性状態であることを実証した(ニュースリリース)。

トポロジカル絶縁体とは,物質内部は絶縁体で電流を通さないが,表面には金属状態が存在し,電流を流すことのできる新しい絶縁体。このトポロジカル絶縁体にさらに磁石の性質である強磁性を導入することで,輸送特性として量子異常ホール効果が実現する。

しかしこれまでのやり方では,量子異常ホール効果が実際に観測される温度が,最高でも-271℃と低い温度にとどまっていた。

今回,トポロジカル絶縁体であるBi2Se3薄膜上にさらにSeと磁性元素Mnを蒸着したところ,表面近傍にMnとSeが潜り込み,MnBi2Se4/Bi2Se3というヘテロ構造が形成された。そして電気的および磁化特性測定によりこの物質が室温でも強磁性状態であることが明らかになった。

今回の研究は,トポロジカル絶縁体に強磁性の性質を付与する新たな方法を発見したもの。この方法は,磁性元素が無秩序に不純物として添加されているのではなく,秩序だった強磁性層として表面近傍に埋め込まれている点で従来のやり方と大きく異なる。その上,磁性元素の分布の均一性と強磁性を示す温度という点で大きな利点がある。

このヘテロ構造を用いればこれまで-271℃までしか実現されていない量子異常ホール効果をより高温で実現できる可能性がある。さらに,そのトポロジカルな性質を生かした極薄ナノデバイス開発の応用研究が加速することが期待できるとしている。

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