東大ら,世界最高性能の伸縮性導体を実現

東京大学,科学技術振興機構,理化学研究所の研究グループは,元の長さの5倍の長さに伸ばしても935 S/㎝という世界最高の導電率を示す伸縮性導体の開発に成功した(ニュースリリース)。

研究グループは,世界最高性能となる従来比約6倍の導電率と従来比約2倍の伸張性を同時に達成する伸縮性導体の開発に成功した。新しい伸縮性導体のペーストは,マイクロメートル寸法の銀フレーク粉とフッ素ゴム(DAI-EL,ダイキン工業)とフッ素界面活性剤を混ぜるだけで作製される。

このペーストを用いれば,ステンシルマスク印刷やスクリーン印刷のような印刷技術で,ゴムやテキスタイルにさまざまな形の配線パターンを簡単に形成することができる。

伸縮性導体は,伸長前の状態で4,972 S/㎝という非常に高い導電率を示す。この材料は200%(元の長さの3倍)まで伸ばしても,1,070 S/㎝という高い導電率を維持することが示された。この値は,2015年に報告された従来型の伸縮性導体の導電率と比べて約6倍に改善されている。

さらに400%(元の長さの5倍)まで伸ばしても,935 S/㎝という高導電率が得られた。200%伸張した際の導電率と,400%伸張した際の導電率は,印刷で作る伸縮性導体としていずれも世界最高値だという。

新素材の構造を高解像度の走査電子顕微鏡や透過電子顕微鏡を用いて観察したところ,ゴムにマイクロメートル寸法の銀フレークを混ぜるだけで,混ぜたフレークの約1/1,000の大きさの銀のナノ粒子がフッ素ゴム中で合成される現象を発見した。また,銀ナノ粒子のサイズや密度はゴムや界面活性剤の化学構造などによって制御できることも示された。

金属のナノ寸法の粒子は,表面積が大きいために粒子同士がすぐに凝集してしまい,これまでゴムの中に均一に混ぜることができなかった。この研究では,マイクロメートル寸法の銀フレークとゴムを混ぜるだけで,銀ナノ粒子が自然に形成される現象を見いだして,従来の問題を解決することができた。

さらに,銀フレークは,銀ナノ粒子と比較して,材料コストも約1/9であるため,材料の大幅なコストダウンに見通しをつけることができた。

研究グループは,新たに開発した伸縮性導体ペーストによる伸縮性配線を活用して,圧力と温度のセンサーをテキスタイルの上に作製した。伸縮性のセンサーがテキスタイル上に簡単に作製できるので,人間やロボットの表面の情報を正確に読み取ることができるようになり,職人の動きを正確に読み取ったり,ロボットの表面に皮膚機能を持たせたりすることができるようになったとしている。

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