KDDI総合研究所は,同社の主席研究員,鈴木正敏氏が平成29年春の褒章において,「長距離高速光通信システムの分散制御技術の開発」により紫綬褒章を受章すると発表した(ニュースリリース)。
紫綬褒章は,科学技術分野における発明・発見や,学術及びスポーツ・芸術文化分野における優れた業績を挙げた個人に授与される。なお,伝達式は2017年5月16日に行なわれる予定。
今回の受章は,長距離光通信システムの高速化を実現する分散制御技術を開発し,グローバル通信ネットワークの大容量化に貢献したことによるもの。これにより,光海底ケーブルにおける伝送容量を1ファイバーペアあたり,これまでの20Gbit/s(2.5Gbit/s×8波)から960Gbit/s(10Gbit/s×96波)まで飛躍的に高め,国内・国際間の光ファイバー通信システムの高速・大容量化を可能とした。
具体的には,波長分散の符号が異なる光ファイバーを周期的に組み合わせた新たな光伝送路で構成される分散制御技術(分散制御光ソリトン通信方式)を考案するとともに,分散制御光伝送路での高速通信を実現するための光パルス送信装置を開発した。これにより,1波長当たりの信号速度を10Gb/sへと高速化するとともに最大100波長の伝送を可能とし,1光ファイバー当たりの総容量がテラビット級の大洋横断長距離伝送を初めて達成した。
この開発は,太平洋・大西洋横断光海底ケーブル等多くの光通信システムで商用化され,特に2000年代に敷設されたほとんどの太平洋及び大西洋横断光海底ケーブルシステム並びにアジア地区の光海底ケーブルシステムに採用されるなど,グローバルネットワークの大容量化による国際間の快適なインターネット通信環境の整備に寄与したとしている。