阪大ら,色収差のないX線顕微鏡を開発

大阪大学,理化学研究所,ジェイテックコーポレーションらの研究グループは,X線全反射ミラーに基づいた色収差のないX線顕微鏡の開発に成功し,世界初となる色収差のない50nmの空間分解能を持つX線像を大型放射光施設SPring-8で取得した(ニュースリリース)。

これまで屈折レンズや回折レンズを用いたX線顕微鏡が開発されてきましたが,強い色収差があり,多色のX線を扱う実験や波長を変える実験ができなかった。そのため,X線領域での高度な顕微分光は困難とされていた。

今回,全反射ミラーを用いるX線結像光学系を開発した。全反射現象は波長によらず同じ角度で反射でき,これは色収差のない反射型レンズが実現できることを意味する。このようなアイディアそのものは知られていたが,半面,要求される作製精度が非常に厳しく,作製例はなかった。

研究グループは,約1nmの作製誤差で目的とする全反射ミラーを作製する技術を確立。全反射ミラーで4回反射させる結像光学系の開発に成功した。これを使って結像型X線顕微鏡を構築し,大型放射光施設SPring-8のBL29XULビームラインで,世界で初めて色収差なく50nmの空間分解能を持つX線像(波長≒1.24Å)の取得に成功した。

さらに,実用性を確認するために,顕微分光の一種であるXAFSイメージングを実施した。XAFSイメージングでは,照射するX線の波長を変化させながら,吸収コントラスト像を撮影する。色収差があるとX線の波長によって焦点が異なるため,高い分解能は期待できないが,この顕微鏡により高い分解能を維持したままXAFSイメージングが実施できた。また,得られたXAFSスペクトルを解析し,元素識別と価数識別もできた。このような観察手法は特に触媒や電池開発に威力を発揮するという。

この成果により,X線領域の顕微分光で課題とされてきた色収差が解決される。X線顕微分光はさまざまな領域で強力な分析ツールとなるほか,SPring-8-IIやSLiT-Jといった次世代放射光施設への応用や,この顕微鏡を生かした新しい顕微分光アプリケーションの登場も期待されるとしてる。

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