早稲田大学は,灰色藻が暗所でも光合成の状態は他の代謝の影響を受けて変化しており,その意味ではもっとも原始的な藻類であることを明らかにした(ニュースリリース)。
藻類のうち,灰色藻はシアノバクテリアの形態的な特徴を色濃く残している。研究は灰色藻の葉緑体で行なわれる光合成と,細胞内の葉緑体以外の部分で行なわれる呼吸などとの反応との間の関係を調べることにより,代謝の観点から藻類の進化を明らかにすることを目的とした。
方法としては「パルス変調クロロフィル蛍光解析装置」という測定機械により,測定細胞を壊さずに細胞の外側から,細胞の中の光合成の状態についての情報を得ることができた。
その結果,細胞が暗所におかれているときには大きく,弱い光を照射すると小さくなるが,強い光を照射すると再び大きくなるという,下に凸の形を描くことがわかった。この結果は,灰色藻では,暗所でも,光合成の状態が他の代謝の影響を受けて変化していることを示している。
そして代謝という観点から見る限り,藻類の3つのグループの中で灰色藻はもっともシアノバクテリアに近く,緑藻や紅藻よりも進化の根元に位置する灰色藻は,他の藻類より祖先のシアノバクテリアに似ているという発見は,光合成生物の進化における代謝の相互作用の重要性も示しているとする。
この研究は光合成生物の進化の過程を通して,呼吸などの他の代謝が光合成に与える影響に対して新たな可能性を提示するものだとしている。