関西学院大学らの研究グループは,近赤外線の宇宙背景放射を観測するロケット実験により,未知の背景放射成分が存在することを発見した(ニュースリリース)。
近赤外線の宇宙背景放射には宇宙初期の星やブラックホールからの放射が含まれていると期待され,その研究の進展が期待されていた。しかし,近赤外線の波長では地球近傍にある惑星間ダストの放射(黄道光)が強く,遠方宇宙からの背景放射の観測精度が上がらない状況が続いていた。
今回,NASAのロケットに望遠鏡を搭載し,宇宙初期の星やブラックホールの探査を目指して,それに適した0.8〜1.7マイクロメートルの近赤外線波長での宇宙背景放射のスペクトル観測を初めて行なった。
これまでは前景放射である黄道光の影響で宇宙背景放射の明るさがよくわかっていなかったが,今回のスペクトル観測により,黄道光の成分を区別することで,宇宙背景放射の明るさを推算することができた。
その結果,観測された宇宙背景放射の明るさは既知の星や銀河の寄与による予測値の倍以上もあり,宇宙にはまだ認識できていない赤外線を発する天体が大量に存在していると考えられるという。
今回見つかった謎の宇宙背景放射成分は,宇宙初期の星やブラックホールによるものの可能性がある。それが事実なら宇宙進化の解明に関わる重要な発見となるが,その結論を出すにはさらに精度の良い観測が必要となるとしている。