NICT,深紫外LEDの光出力150mW超を達成

情報通信研究機構(NICT)は,光出力150mWを超える世界最高出力の深紫外LEDの開発に成功したと発表した(ニュースリリース)。

深紫外波長帯(200~300nm)で発光するLEDは,殺菌から医療、環境、工業、ICT分野まで、幅広い領域でその利用が期待されている。しかしながら、従来の深紫外LEDの光出力は高いものでも数十mW程度と低く,実用面で普及させるにはその出力が不十分だった。

深紫外LEDは,窒化物系半導体(AlGaN)を用いて作製されるが,近年の結晶成長技術の進展によって内部量子効率は大きく改善されている一方,光取出し効率が極めて低く,発熱や光出力飽和現象などの問題が顕在化することから高出力化が難しく,それらの課題を解決する新しい技術の開発が求められていた。

今回,新たに開発した窒化アルミニウム(AlN)基板上深紫外LEDに対するナノインプリント技術を用いて,LEDチップ全面に光取出し特性と放熱特性を同時に向上させる独自のナノ光・ナノフィン構造を形成することで,従来構造と比べ光出力を大幅に増大させることに成功した。

これにより,シングルチップ(チップサイズ: 1mm2,電極メサ面積: 0.35mm2)の深紫外LED,殺菌作用の最も高い発光波長265nm,室温・連続駆動下において,深紫外波長帯 世界最高出力となる光出力150mW超を達成した。

従来のフラットな素子構造では,注入電流が増加するとともに,外部量子効率と光出力が大きく低下する現象が見られたが,今回開発したナノ光・ナノフィン構造を形成した深紫外LEDでは,注入電流を増加(最大850mAまで)させても外部量子効率の低下は極めて少なく,光出力も増大を続けた。

この結果,従来構造に対し,最大注入電流時において約20倍という大幅な光出力の向上を達成した。また,スペクトル解析の結果,高注入電流時でのLEDのジャンクション温度の上昇が従来構造に対し抑制されていることを明らかにした。

この成果は,ナノ構造を駆使して光出力を大幅に向上させる技術でありながら,ナノインプリント技術を用いることで,従来の電子ビーム描画等の加工法を用いる場合と比較すると,圧倒的な製造時のコスト低減を可能にするもの。研究グループはこの深紫外LEDにより,水銀ランプなどの既存大型光源では難しかった様々な新しい組込み型アプリケーション実現の可能性を飛躍的に高めるとしている。

深紫外LEDの光取出し技術を巡っては,理化学研究所が今年2月に光取り出し効率20.3%を報告しており,開発競争が激化している。

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