京大ら,光子で3量子ビットのゲート操作を実現

著者: sugi

京都大学の研究グループは,北海道大学,大阪大学,広島大学と共同で,光量子回路により3つの量子ビットに対する「制御スワップ操作」を,外部入力の可能な物として初めて実現した(ニュースリリース)。

近年、量子力学の基本的な性質を応用した「量子技術」が注目されている。光の素粒子である「光子」は,量子状態の保存性が良く,また長距離伝送が可能であることなどから,量子情報の有力な担体として研究が進められている。

これまでに,2つの光子間のゲート操作(2入力2出力ゲート素子)は実現されているが,現在その効率が限られており,その集積化の上で問題となってた。それを解決するとして,3入力3出力ゲート素子の実現が期待されている。

特に,制御スワップゲートと呼ばれる素子は,量子誤り訂正や,量子指紋認証など,様々な量子プロトコルに用いることができる。制御スワップゲート素子は,2入力2出力素子を組み合わせることで理論上可能だが,その場合,成功確率は10万分の1以下となり,実現は事実上不可能だった。

この問題に対し,2008年に光の干渉計を組み合わせることで,従来の500倍以上の効率(162分の1)で,制御スワップを実現する方法がFiurasekより提案されている。しかし,非常に複雑な光干渉の長時間安定化など技術的な困難が多数存在し,これまで実現していなかった。また最近,オーストラリアのグループにより制御スワップ操作の実現が報告されたが,これは外部からの光量子ビットの入力が不可能であり,光量子回路をはじめとする様々な応用にそのまま用いることはできない。

そこで研究グループは,Fiurasekが理論的に提案した方法に基づき,外部からの光量子ビットが入力可能な制御スワップゲート操作の実現に初めて成功した。実験にあたっては,複数の特殊な半透鏡が,1つの光学部品に集積されたハイブリッド光学素子を巧みに組み合わせることで,非常に複雑な光回路を長時間安定な光干渉計として実現するなど,技術的な課題を克服した。

この研究成果は,光量子コンピュータの集積化,高効率化や,量子状態を用いたさらに高度なセキュリティー技術の実現につながるもの。従来の2入力ゲートを組み合わせた光量子回路に比べて,光量子回路の効率を大きく高めることができる。また,量子指紋認証など,量子状態を用いたさらに高度なセキュリティー技術の実現などが期待されるとしている。

キーワード:
 

関連記事

  • KDDIなど、商用ネットワーク上で耐量子セキュリティ技術を活用した大容量データ伝送に成功

    KDDI、KDDI総合研究所、ノキアソリューションズ&ネットワークス、および東芝デジタルソリューションズは、KDDIの大阪堺データセンターと大阪市内のネットワークセンターを結ぶ商用ネットワーク上で、耐量子セキュリティ技術…

    2026.02.19
  • 世界最大の光技術イベントで感じた「変化の兆し」 Photonics West 2026

    光業界における世界最大のイベント、Photonics Westが今年も1月17日から6日間、米国サンフランシスコのMOSCONE CENTERで開催された。 例年同様、会場内は熱気にあふれていたものの、垣間見えたのは「変…

    2026.02.17
  • 量子産業の未来図を描く

    量子への注目が世界的に高まるなか,トプティカフォトニクスのレーザーシステムが存在感を増している。日本での展開をさらに加速させているPresident and Chief Sales Officerのトーマス・レナー氏に,…

    2026.01.13
  • 京都大学など、人工次元で乱れに強い「トポロジカル原⼦レーザー」の発振に成功

    京都⼤学と東北⼤学は、極低温のルビジウム原⼦を⽤いた実験により、トポロジカル原⼦レーザーの発振に成功した(ニュースリリース)。 量⼦⼒学の世界において、外部環境とのエネルギーの出⼊りがある系は⾮エルミート量⼦系と呼ばれる…

    2026.01.13
  • 横国大とKEK,量子科学に関する研究を推進するための連携協定を締結

    横浜国立大学と高エネルギー加速器研究機構(KEK)は,2025年10月17日に量子科学に関する研究を推進するための連携協定を締結した(ニュースリリース)。 世界的に注目されている量子技術は,未来社会に向けて革新的なイノベ…

    2025.11.10
  • フォトニクスのアカデミー賞、SPIEプリズムアワード2026の最終候補者が決定

    国際光学・フォトニクス学会(SPIE)は,2026年Prism Awards(プリズムアワード)の最終候補製品を発表した。 Prism Awardsは「フォトニクスのアカデミー賞」とも称される国際的な表彰制度であり,光学…

    2025.11.07
  • 量子研究の卓越を称えて――TOPTICA,BEC 2025で画期的成果を表彰

    光学技術メーカーのTOPTICA Photonics SEは,スペインで開催された国際会議「Bose-Einstein Condensation 2025(BEC 2025)」において,超低温量子ガス分野で顕著な業績を挙…

    2025.10.27
  • 科学大,進化した量子誤り訂正法を考案

    東京科学大学の研究グループは,大規模量子計算の実現に不可欠な「量子誤り訂正技術」において,理論上の性能限界に極めて近い効果を持ちながら,高速に訂正する手法を発見した(ニュースリリース)。 実用的な量子アプリケーションの多…

    2025.10.22

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア