大阪大学の研究グループは,金ナノロッドを二酸化チタン(TiO2)メソ結晶に担持させた複合体が,可視・近赤外光照射下で光触媒として働き,水からの非常に高効率な水素発生を起こすことを見出した(ニュースリリース)。
研究グループは2012年,TiO2ナノ粒子結晶を高密度かつ規則的にマイクロメートルサイズに集積させたTiO2ナノ粒子超構造体(TiO2メソ結晶)を合成する簡便で応用性の高い方法を開発した。このTiO2メソ結晶では,ナノ粒子の無秩序な凝集によって生じる表面積の低下や界面の不整合による電荷移動効率の低下を克服でき,ナノ粒子間で高効率電荷移動が起こり,電荷が長寿命化し,高伝導性,高光触媒特性を示す。
TiO2は幅広いバンドギャップ(3.2eV)を持つ半導体であり,太陽光の僅か3-4%の紫外光のみで励起され光触媒として働くことはよく知られている。そこで太陽光を有効に利用するためには,紫外光のみでなく,可視・近赤外光までの広帯域の光を吸収する物質(光増感剤)との複合化が必要となる。
例えば,表面プラズモン共鳴(SPR)ピークを390–460nmに持つ銀ナノ粒子や,520–640nmに持つ金ナノ粒子を光増感剤として使用することによって可視光利用が可能となる。しかしながら,太陽光のかなりを占めるさらに長波長の可視光や近赤外光の照射で働く光触媒の開発はまだこれからの課題となっている。
ところで,金ナノロッドはその縦横比によってSPRピーク位置が変化し,可視・近赤外光の広帯域に吸収を持たせることができる。そこで研究グループは,この金ナノロッドをTiO2メソ結晶に担持させた複合体を合成し,可視・近赤外光照射下で光触媒として使用すると,メタノールを含む水溶液から非常に高効率な水素発生(924µmol h-1g-1)が起こることを見出した。
これは金ナノロッドの縦方向SPRからのTiO2メソ結晶への高効率電子移動,引き続き超構造体TiO2メソ結晶中のナノ粒子間で高効率電荷移動が進行し,電荷寿命は4.8ナノ秒と約10倍も長くなったため。
この成果は今後,可視光・近赤外光応答型の光触媒や色素増感型太陽電池の電極材料などの光エネルギー変換デバイスの更なる効率向上に役立つ技術としての活用が見込まれるとしている。