九州大学の研究グループは,中国西安交通大学の研究グループと共同で,熱により巨大なスピン流の生成が可能である物質CoFeAlと他の強磁性金属を組み合わせてスピンデバイスを作製し,これまで困難であった強磁性金属の熱スピン注入特性を高精度に評価する手法の開発に成功した(ニュースリリース)。
エレクトロニクスデバイスの更なる高性能化・高機能化の観点から,スピン角運動量の流れであるスピン流を用いたデバイスが注目されている。スピン流を用いることで,情報の担い手を電荷からスピンに替え,不揮発性やジュール熱の最小限化など,消費電力の大幅な低減が期待できると共に,スピンの方向自由度を用いた多彩な特性をデバイスに付加させることができる。
研究グループは,このようなスピンデバイスのカギとなる物理量「スピン流」を更に発展させた電流を伴わないスピン流「純スピン流」に着目し,これまでさまざまな制御技術を開発してきた。この純スピン流を利用することにより,前述の電流による不要なエネルギー損失を排除することが出来,更によりエネルギー効率の良いスピンデバイスの動作が可能になると期待されている。
この研究で確立された手法を用いることで,あらゆる強磁性金属の熱スピン注入特性を評価することができる。熱スピン注入特性は,強磁性金属内部の電子状態を反映しているため,物性研究の新しいツールとしての利用が期待される。
また,より高効率な熱スピン注入特性を持つ物質の探索が可能となり,熱を活用したスピンデバイスの性能向上につながるとともに,現在使用されず捨てられている電子回路上の排熱等を効率的に利用し,動作させる新しい省エネデバイスへの応用に期待されるとしている。