奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)光情報分子科学研究室教授の河合壯氏は3月17日,日本化学会学術賞を受賞した(ニュースリリース)。
受賞題目は「高反応活性光応答分子材料の開発とその学理に関する研究」。同賞は,化学の基礎または応用のそれぞれの分野において先導的・開拓的な研究業績を挙げた者で,優れた業績をあげた会員を表彰し,その成果を称えることを目的として授与されるもの。本年度は,11名が受賞した。
光応答分子材料は半導体加工,印刷および塗料などの各産業分野や医療技術の基盤科学技術として利用されている。その中で,光反応感度の向上は最重要課題と位置付けられてきた。河合氏は広範な光応答分子材料の中でも光可逆性を有するフォトクロミック分子を中心に研究を進め,その高感度化に関する系統的なアプロ―チを通じて,広範な光応答分子材料の画期的な高感度化への道筋を示すことに成功した。
この知見をもとにレジスト材料などの高感度化を進め,その基盤となる光酸発生剤の高感度化において世界記録を更新するとともに,基底状態構造の制御に関する新概念など学理の深化に貢献した。さらに新しい高次連鎖反応系の構築に取り組み1光子の消費により多数の分子が反応する高感度反応系の構築に成功した。今後,超高感度放射線感光材料など多様な応用分野への貢献が期待されている。