富士通研究所とFujitsu Laboratories of America, Inc.(FLA)は,光ネットワークのスループットを向上させる新しい光ネットワークの伝送性能推定技術を開発した(ニュースリリース)。
光ネットワークは数多くの光ファイバー,通信機器から構成されており,光ファイバーの損失や増幅器の雑音量など,個々の物理パラメーターについて,すべてを計測して正確に把握することは困難であるため,従来は,光ファイバーや通信装置の設計仕様値に基づいて伝送性能を推定していた。
しかし,安定したネットワーク運用を担保するため実際の伝送性能より過小に見積もる必要があり,結果として本来使えるはずのネットワークスループットに対して制限された状態で運用されるという課題があった。
今回,運用中の光ネットワークを構成する装置から得られる一般的な観測値である,ビット誤り率を使ってネットワークの特性を学習することにより運用時の伝送性能を高精度に推定する技術を開発した。これにより光ネットワークのスループットを向上できるようになる。
伝送距離約1000km相当の光ネットワークテストベッドを用いて,今回開発した技術の実験検証を実施し,得られた結果に基づき推定精度の分析を行なった結果、テストベッド環境における推定誤差が15%以内であることを確認した。
さらに検証結果に基づいてネットワークシミュレーションを行なったところ,伝送経路によっては1波長あたりの信号スループットを最大50%改善し,光ネットワーク全体としてスループットを約20%改善できることを確認した。
両社では,今回開発した技術の精度検証をすすめ,富士通の光伝送システムおよび広域ネットワーク仮想化ソリューションに適用する技術として,2018年度中の実用化を目指すとしている。