北大ら,ISSで氷の成長実験に成功

北海道大学と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は,国際宇宙ステーション(ISS)・「きぼう」日本実験棟において,氷点下に冷却した水中での氷の結晶成長実験に成功した(ニュースリリース)。

極地の海の流氷直下に住む魚が氷点下の環境でも凍結しないのは,血液中に含まれる不凍糖タンパク質が氷結晶/水界面に吸着することで,結晶成長を抑制するためとされてきた。しかし,実際のメカニズムは不明だった。

結晶成長の実態を探るには,成長速度の時間変動を精密に測定することが不可欠だが,地上実験では対流などの効果で成長速度が変化しやすいため,無重力環境での測定が重要となる。研究グループは国際宇宙ステーションで実験を行なった。

実験は地上からの遠隔操作で行ない,結晶成長をビデオで観察した。氷の底面からの光反射で生じる干渉縞で,その移動する速度を精密に測定することで底面の成長速度を決定することができる。

その結果,不凍糖タンパク質の効果により氷の底面では成長速度が純水中に較べて3~5倍も速くなり,さらに周期的に変動(振動)することが明らかになった。従来,不凍糖タンパク質が氷の成長を抑制すると考えられてきたため,この結果は一見矛盾するように見える。

しかし,実際には氷の結晶外形の効果により成長の速い面は消失し,最終的に最も成長速度の遅い面で囲まれるため成長が止まり,凍結抑制に対する不凍糖タンパク質の役割を矛盾なく説明できることが示された。

不凍糖タンパク質が氷の結晶成長を促進したり周期振動させたりすることは,生体高分子による結晶成長の制御の仕組みと直結している。生体内で起きる様々な結晶成長の原理を理解して,新しい材料の創製に結びつけることを目指すバイオ・クリスタリゼーションの原理にも密接に関連している。

この研究成果を進展させることにより,今後,生体の極限寒冷環境での生き残り戦略の物理的な仕組みを明らかにし,凍結抑制の機能性タンパク質としての原理を解明することで,医療分野,食品分野,エネルギー分野などへの活用が期待されるとしている。

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