岡山大,酸化グラフェンの形成メカニズムを解明

岡山大学の研究グループは,黒鉛から酸化グラフェンを合成する過程を追跡し,黒鉛が酸化されて剥がれていく反応をリアルタイムで観察することに成功。酸化グラフェンの形成メカニズムを世界で初めて解明した(ニュースリリース)。

黒鉛が酸化剤(過マンガン酸カリウム)と反応する過程を追跡することに成功し,必要な酸化剤の量,反応温度,反応時間,精製法などを最適化し,従来をはるかに超える効率(約1/50のコスト)で酸化グラフェンを合成する指針を与えた。

酸化グラフェンの合成法では,リン酸,酸化マンガン,水などを添加することで,酸化の効率が向上するとされてきた。しかし,これらの添加剤の効果は科学的に証明されていなかった。

研究では,添加剤の効果を確認する網羅的な実験を行ない,酸化グラフェンの形成には,黒鉛,硫酸,過マンガン酸カリウムのみで良いということを明らかにした。さらに,反応温度や酸化剤の量が生じる酸化グラフェンに与える影響も明らかにした。 これにより,簡便・安全・安価・省廃棄物で酸化グラフェンを合成することが可能になった。

また,酸化グラフェンは濃硫酸中で形成されるため,通常の分析を行なうことができない。研究では大型放射光施設(Spring-8)のビームライン BL02B2を利用して,その場X線回折実験を行なうことにより,濃硫酸中での反応の追跡を世界に先駆けて実施した。その結果,黒鉛の層間は反応後1分以内に拡がり,その後1時間程度かけて乱雑化していくことが分かった。また,過マンガン酸カリウムが消費され,酸化が完結するには2時間かかることが分かった。

反応に用いる酸化剤や,反応時間を正確に決定できたことから,酸化グラフェンの連続フロー合成を行なうことが可能になった。送液ポンプを用いて,黒鉛,硫酸,過マンガン酸カリウムを流すことで,流路内で酸化反応が進行し,出口から酸化グラフェンが連続的に出てくる。将来の工業化には,このような連続フロープロセスの開発も視野に入れているという。

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