東大ら,血管新生をOCTでライブイメージング

東京大学の研究グループは,微小な血管をマイクロチップ上につくり,その血管から新しい血管が枝分かれし伸びる現象(血管新生)を三次元的に生きたまま観察することに,SCREENホールディングスと共同で成功した(ニュースリリース)。

具体的には,コラーゲンゲルの中空構造体にヒト血管内皮細胞を培養してつくりだした人工的な微小血管にがん細胞などが産生する血管内皮細胞増殖因子(VEGF)を加えることで,がん組織などでみられる血管が枝分かれし成長する血管新生現象を再現させることができた。

従来の三次元細胞立体組織の観察には,蛍光物質を使って可視化する方法が主に用いられてきたが,光毒性,蛍光修飾法,観察深度の制限などからライブ観察には向いていなかった。

そこで研究グループは,血管新生の様子を観察できる微小血管モデルをポリジメチルシロキサン(PDMS)で作製したマイクロデバイスの中に構築した。構築した血管から新しい血管が新生するときの三次元構造の変化をライブで観察するため,眼底検査などに利用される光干渉断層撮影法(OCT : optical coherence tomography)に着目した。

SCREENホールディングスは,眼底検査で使用されるプローブ型OCTを細胞培養皿が見やすいステージトップ型に改変した新しいOCTシステムを開発しており,研究グループはこれを用いて微小血管モデルが血管新生する過程について三次元ライブ観察を行なった

構築した微小血管に血管新生因子の1種であるVEGFを加えると,新しい血管が分岐して伸長する様子が観察された。このとき,OCTを使うことで蛍光分子の修飾を必要とせずに10μmの解像度で長さ数mmの血管領域を数分で簡便に観察することができた。これを1日ごとに観察することで,時間に伴って徐々に血管から新しい血管が伸び,中空な構造をつくって成熟していく過程を初めて直接観察することに成功した。

今回開発した技術は,三次元的な組織の構造を簡便に観察できる手法であり,血管以外にもさまざまな臓器を可視化できることから,三次元組織構造体を扱う再生医療や創薬研究への幅広い利用が期待できるとしてる。

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