日本触媒は,酸化グラフェン系材料の量産試作に成功した(ニュースリリース)。
酸化グラフェン系材料は厚さ約1nmの薄片状物質であり,近年,次世代電池材料や,潤滑剤,水浄化用,触媒等の各種機能材料用途への展開が研究され,優れた特性を発現することが期待されている。
一方で,その合成にはグラファイト(黒鉛)の酸化反応を経由するが,強酸溶媒中において強力な酸化剤を使用することから,従来は大量生産が困難で,研究目的用に極少量が非常に高価な価格(固形分換算で1万円/g程度)で市販されているのみであり,また工業的な用途開発の遅れから,その優れた特性が実用化するには至っていなかった。
このような中,NEDOの実用化プロジェクト「低炭素社会を実現するナノ炭素材料実用化プロジェクト」 (2010~2016年度)で,日本触媒は,これまで培ってきた化学品製造における化学反応を安定に進行させる制御技術と共同研究実施先である岡山大学がこれまでに解明した酸化グラフェンの生成 メカニズムに関する学術的な知見を融合,活用することにより,酸化反応における種々の課題を解決し,量産試作に成功した。
酸化反応プロセスから得られた酸化グラフェンは,厚さが極めて薄く(炭素原子1個分~数層)かつ数μm角レベルの大面積という従来にない優れた特性を有している。
日本触媒は,今回の量産試作において,生産量が従来のラボレベルから数十倍まで向上したことか ら,今回の成功を基に酸化グラフェン系材料のサンプルワークを開始し,新規需要の開拓を推進して いく予定。NEDOは,酸化グラフェン系材料の優れた特性が身の回りの製品に活用されることで,低炭素社会への貢献を目指す。