3Dプリンター材料市場,2020年には2,070億円規模に

矢野経済研究所では,3Dプリンター材料メーカー等を対象として,3Dプリンター材料の世界市場の調査を実施した(ニュースリリース)。

この調査における3Dプリンター材料とは,①材料押出(Material extrusion:ME)法,②粉末床溶融結合(Powder bedfusion:PBF)法,③液槽光重合(Vat photopolymerization:VP)法,④材料噴射(Material jetting:MJ)法の4方式で使用される樹脂(熱可塑性エラストマー含む)および金属。

それによると,2016年の3Dプリンター材料の世界市場規模は,エンドユーザー購入金額ベースで前年比116.1%の1,069億83百万円と大きく伸長する見込み。米国をはじめ欧州,中国などでコンシューマー分野(個人・家庭,クリエーター,教育機関など),産業分野ともに3Dプリンターの導入が進んだことで,3Dプリンター材料の世界市場は2ケタの成長率を見込む。

16年の3Dプリンター材料の世界市場(エンドユーザー購入金額ベース)を方式別にみると,材料押出法向け材料市場規模は219億66百万円(構成比20.5%),粉末床溶融結合法向け(樹脂粉末)が233億円(同21.8%),粉末床溶融結合法向け(金属粉末)が115億50百万円(同10.8%),材料噴射法向けは295億円(同27.6%),液槽光重合法向けが206億67百万円(同19.3%)を見込む。

3Dプリンター世界市場は,今後も大きく伸長する見通し。その結果として,3Dプリンター材料の世界市場も高い成長率が続き,2015年から2020年までの年平均成長率(CAGR)は17.6%となり,2020年の3Dプリンター材料の世界市場規模(エンドユーザー購入金額ベース)は2,070億53百万円に達すると予測する。

3Dプリンターは産業分野において,試作品からワーキングモデルへの採用が進んだ。特に材料開発が用途拡大に大きく貢献しているものとし,液槽光重合法向け材料であれば,光硬化樹脂に対する高温環境下で使用する際の耐熱性や勘合・着脱試験等を行なうための靭性,水や気体等の流体を可視化したい場合の透明性などを高次で両立させたグレードの材料開発が進んでいるという。

また,粉末床溶融結合法向けの樹脂材料ではPA6粉末やPPS粉末が上市された。これらの材料は幅広い分野の最終製品向けで実績があり,最終製品と同じ材料で試作品を製造したいといったニーズに対応する。また,PA6粉末やPPS粉末は耐熱性や機械的特性の点において,現在の主要材料である PA12粉末がカバーしにくかったワーキングモデル・機能部品へも展開しやすい。2018年頃にはこれらの粉末の需要が本格化するとしている。

従来から治工具や補聴器などの製造には3Dプリンターが使用されてきたが,ここ数年で最終製品向けでの適用が増えつつあるという。粉末床溶融結合法向けの樹脂粉末では,航空機のエアダクトやロボットアーム,ボトル搬送用グリッパー,医療用ドリルガイド,人工装具・矯正器具,携帯機器用ケースなどで主にPA12粉末が使用されており,この方式では,今後も小ロットの最終製品向けで採用が広がる可能性が高いという。

また,粉末床溶融結合法向け材料では,金属粉末の需要も最終製品向けで急増している。航空機分野ではボーイング「777-200ER」に搭載されるジェットエンジン用の温度センサハウジング,次期ジェットエンジンの燃料ノズル向けでCo-Cr-Mo合金粉末が採用されている。医療分野ではインプラント向けでTi-6Al-4V合金粉末,歯科技工物向けではCo-Cr-Mo合金粉末などの需要が立ち上がった。

この他,海外ではオイル・ガス分野が期待されており,既にガスタービンノズルやダウンホールツール用ノズルなどでTi系合金などの採用実績があるという。このように,金属粉末を用いる粉末床溶融結合法では,ほぼ密度100%の造形品を製造できるため,最終製品への適用が容易。そのため,今後も航空宇宙分野などの小ロット品向けを中心に,金属粉末の市場は高い成長率が続く見通しだとしている。

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