富士通研,高感度グラフェンガスセンサーを開発

富士通研究所は,原子一つ分の厚さで炭素原子がシート状に結合した材料であるグラフェンを利用した新原理の高感度ガスセンサーの開発に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

グラフェンを利用した機能的デバイスの1つとして,高感度(ppb単位)で,特定のガス成分を高精度に測定できるガスセンサーが望まれている。ガスクロマトグラフィーなど専用の装置をは大型で,測定に時間がかかるなどの課題があり,携帯可能でリアルタイム測定が可能な半導体式ガスセンサーは特定のガス成分を検出するには性能が不十分だった。

グラフェンを利用したガスセンサーとしては,これまでガス吸着時のグラフェンの抵抗値の変化を検出するセンサーが提案されているが,1ppmの濃度のガスに対して抵抗変化率は数%程度であり,実用化には至っていない。

今回,開発したセンサーは,通常のシリコントランジスターのゲート部分を原子一層分の厚みのグラフェンで置き換えた構造を持つ。ガス分子がグラフェンに吸着すると,グラフェンの仕事関数が変化し,その結果シリコントランジスターのスイッチング特性が大きく変化する原理を利用してガスを検出する。また,ガス分子がグラフェンから離れると元の状態に戻る。

今回開発したセンサーは,窒素中においてNH3については数十ppb程度,NO2においては1ppb以下の感度を実現し,さらに,大気成分の分析や呼気分析などを想定したガスの中では,NO2,NH3にのみ反応し,特定のガスだけを検出できることを確認した。

この技術のNO2に対する感度は1ppb以下と,従来のグラフェンを用いた抵抗変化型センサーや市販の数十ppbの感度を持つ電気化学式センサーと比較して,10倍以上であることがわかった。

今回開発したセンサーは,検知部分が数百㎛と小型だが,さらに小型化(例えば1㎛以下)することが可能。また従来技術より感度が高く,さらに検知が化学反応によらないため,熱を加えるなどして吸着したガスが離れると元の状態に戻るという特徴を持つ。

このセンサーを使うと,大気汚染の指標として40から60ppbという環境基準があるNO2について,場所を選ばず,リアルタイムで高感度に測定する小型装置の実現が可能になるという。

同社では,今回原理実証を行なったグラフェンゲートセンサーに関し,実環境中での特性検証や耐久性調査などを行なった後,環境センサーとしての実用化を目指す。また,グラフェンと他の分子などを組み合わせることにより,二酸化窒素,アンモニア以外のガスの検知を目指す。

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