東芝社,光で二酸化炭素をエチレングリコールに変換する光電気化学システムを開発し,エネルギー変換効率0.48%を達成した(ニュースリリース)。
同社は電気化学的に二酸化炭素をエチレングリコールに還元する分子触媒の開発を進めており,今回,光起電力素子としてシリコン系太陽電池を用いて,光で二酸化炭素をエチレングリコールに変換する光電気化学システムを開発した。
これまで,二酸化炭素を一酸化炭素やギ酸などの2電子還元物質に変換する電気化学触媒技術が報告されてきた。より複雑な還元反応によって生成される多電子還元物質においては,炭化水素に直接変換する銅などの触媒の研究が進められているが,副生成物が多いという課題があった。
同社は従来から電気化学的に二酸化炭素をエチレングリコールに変換する分子触媒の開発を進めてきた。今回,光起電力素子としてシリコン系太陽電池を用いて,光で二酸化炭素をエチレングリコールに変換する光電気化学システムを開発した。
この光電気化学システムを用いてエチレングリコールへの変換を行なったところ,エネルギー変換効率0.48%を達成した。分子触媒は金属表面上にイミダゾリウム塩誘導体を高密度に吸着させたもの。金属表面に吸着したイミダゾリウム塩誘導体が分子上で二酸化炭素分子と相互作用をすることで,従来実現できなかった反応を可能にした。
これは,分子触媒が,二酸化炭素の反応を促進するとともに,2電子還元反応よりも複雑な多電子還元反応の反応場としての役割を果たしているからだと推測している。
得られたエチレングリコールはPETボトルやポリエステル繊維・樹脂の原料にも使用できる汎用性の高い工業原料。分子触媒の吸着方法を見直して二酸化炭素還元の性能を向上させた電極を利用し,触媒が最も効率的に作用するように光電気化学システムを制御した事により,光によるエチレングリコール生成が可能となった。