環境省,国立環境研究所(NIES)及び宇宙航空研究開発機構(JAXA)は,温室効果ガス観測技術衛星「いぶき(GOSAT(ゴーサット))」を用いて,二酸化炭素やメタンの観測を行ない,「地球大気全体(全大気)」の二酸化炭素平均濃度について,平成28年2月頃に季節変動を取り除いた濃度(推定経年平均濃度)が初めて400ppmを越えたことがわかった(ニュースリリース)。
「いぶきは」,環境省、NIES,JAXAが共同で開発した,世界初の温室効果ガス観測専用の衛星。赤外線センサー等による温室効果ガス観測センサーを搭載し,平成21年1月の打上げ以降,現在も観測を続けている。
月別平均濃度については,平成27年12月に初めて400ppmを越え,400.2ppmを記録したが,その後さらに平成28年5月までの解析を進めたところ,平成28年2月頃に推定経年平均濃度が400ppmを越えた(400.2ppm)ことが分かった。
地表面から大気上端(上空約70km)までの大気中の二酸化炭素の総量を観測できる「いぶき」のデータに基づいた「全大気」の推定経年平均濃度が400ppmを超えたことが確認されたのはこれが初めてであり,その値は観測開始から平成28年5月まで上昇し続けている。また,月別平均濃度も平成28年5月に過去最高濃度(402.3ppm)を記録している。
過去1年間で増加した濃度(年増加量)については,平成22年5月から平成28年4月の平均値は約2.2 ppm/年だったが,平成27年夏頃から平成28年4月にかけて2.5ppm以上という高いレベルで推移している。同様の傾向は気象庁や国立環境研究所等による地上観測でも報告されているが,今回の「いぶき」の結果より,この現象が地表付近や特定地域に限らない地球規模の現象であることが示唆された。
産業革命前に280ppm程度だった二酸化炭素濃度は,現在年間2ppmを越えるスピードで増加している。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書では,2100年に温室効果ガス濃度が二酸化炭素濃度換算で約450ppm又はそれ以下となる排出シナリオにおいて,産業革命以前の水準に対する気温上昇を21世紀にわたって2度未満に維持できる可能性が高いことが報告されているという。
グループでは今後も引き続き,「いぶき」観測データに基づく成果の公表を行なうとともに,平成29年をめどに打上げを予定している「いぶき後継機(GOSAT-2)」を用いて継続的な温室効果ガス観測を実施し,それらの成果を地球温暖化予測の精緻化に反映させていく予定。