東京工業大学は,米ワシントン大学と共同で,グラフェンに代表される2次元ナノシートの表面で自発的に規則正しくナノ構造を形成するペプチドを開発した(ニュースリリース)。
研究の進捗が著しいグラフェンなどの2次元ナノ材料は,将来のバイオセンサーの要素として大きな期待が寄せられており,生体分子とグラフェンの電子的な相互作用を理解することは,基礎科学的にも重要な問題であった。
研究グループは,遺伝子工学的手法を用いて,グラファイトに強く吸着する60種類のペプチドを実験的に発見した。これらのペプチドは,わずか12個のアミノ酸から構成されている。
開発した自己組織化ペプチドは,グラフェン・トランジスタの表面に整列することにより,単層グラフェンの電気伝導特性を特異的に変調する。また,ペプチドのアミノ酸配列を一部変更することによって,半導体ナノシートとして近年注目を集める単層二硫化モリブデンの電子および光物性を自在に制御することにも成功した。
これらは小さいタンパク質であるペプチドが,新しいエレクトロニクス材料として期待されている2次元ナノシートの電子・光特性を制御できることを実証したものであり,生体材料とナノ材料の界面を電子的に制御する新たな手法を確立したとする。
さらに,生体分子と固体エレクトロニクス材料の相互作用の機構を理解する上で有用なプラットフォームとなることも期待される。将来は,ナノシートを使用した新たな機構を有するバイオセンサーの開発などにつながる成果だとしている。