埼玉大学,大阪大学,横浜市立大学,東北大学,創晶らの共同研究グループは,レーザーによる破壊プロセスを用いた,大型タンパク質結晶育成の革新的技術を開発した(ニュースリリース)。
タンパク質は様々な生命現象を支える重要な物質であり,タンパク質の分子構造はその機能を調べる 上で必要不可欠な情報となっている。
一般的に,タンパク質の分子構造を知るためには,まず大きい単結晶(数十ミクロン以上)を作製し,X線や中性子線により解析する。しかし,タンパク質は結晶成長の駆動力が弱く,分子構造の解析に必要な大きさの結晶を得ることが難しいケースが多々あった。
研究グループは,フェムト秒レーザーアブレーションによる光誘起現象により,タンパク質の結晶面の一部を破壊すると,その結晶面の成長が数倍以上加速するという新奇な現象を発見した。
興味深いことに,レーザー破壊箇所を含む,成長した結晶のX線回折パターンを測定したところ,結晶 品質の劣化は認められなかった。
さらに,この新奇な結晶成長現象のメカニズムを光学顕微法やX線トポグラフ法により調べた結果,レーザーによって破壊された箇所から,結晶成長の駆動力が大きい渦巻き状の成長様式(成長モード)が発生することを明らかにした。
このように能動的且つ時空間的にタンパク質結晶の成長モードを制御した例はこれまでになく,これらの結果は,この手法が大型タンパク質結晶作製におけるブレークスルーとなり得ることを示しているという。
この研究成果により,今後,開発した手法が種々のタンパク質の大型単結晶の作製に応用され,様々な 生命現象のメカニズム解明に役立つことが期待されるとしている。