東北大,熱ふく射を利用した太陽発電に成功

東北大学の研究グループは,幅広い波長の光を含む太陽光を,太陽電池に最適な波長の熱ふく射に変換し発電する太陽熱光起電力発電(Solar-thermophotovoltaic: Solar-TPV)システムにおいて世界トップレベルの発電効率を達成した(ニュースリリース)。

太陽から放射される光(熱ふく射)は,幅広い波長分布(=スペクトル)を持つ。単接合太陽電池は,使用される半導体材料のバンドギャップより短波長の光しか電気に変換できないため,バンドギャップより長波長の光は電気に変換されず損失となる。

一方で,太陽電池を複数枚重ね合わせた多接合太陽電池は,吸収できる波長域を拡げることで幅広い波長分布を持つ太陽光スペクトルを無駄なく電気に変換することができる。しかしながら,多接合太陽電池は作製が難しく,単接合太陽電池に比べ生産コストが高いといった課題がある。

研究では,“熱ふく射のスペクトル制御”と“熱ふく射の一方向への輸送”という概念に基づいた熱ふく射の変換・輸送効率を新たに提案した。このSolar-TPVシステムでは,太陽光が太陽光選択吸収材料においていったん熱に変換された後,波長選択エミッタからの熱ふく射に変換される。

つまりSolar-TPVは光子から光子への波長変換システムであり,同様に太陽光を熱に変換する従来の集光型太陽熱発電とは異なる。そのため,このシステムでは吸収した太陽光のエネルギーを損失なく波長選択エミッタのみに輸送すること,つまり,高い熱ふく射の変換・輸送効率を達成することが重要となる。

さらに,高効率なシステムを達成するためには,波長選択エミッタからの熱ふく射スペクトルが光電変換セルの感度波長域にマッチングしていること,つまり高い光電変換効率を達成することが重要となる。

作製した太陽光選択吸収材料と波長選択エミッタでは,より高い熱ふく射の変換・輸送効率を得るため面積比を持たせ,太陽光選択吸収材料からの反射・放射損失を抑制した。その結果,熱ふく射輸送効率 54%,光電変換効率28%が期待できる太陽光選択吸収材料と波長選択エミッタの設計と作製に成功した。

作製した太陽光選択吸収材料,波長選択エミッタ,ガリウムアンチモン光電変換セルを用いた発電試験において,世界トップレベルの発電効率5.1%を達成した。熱ふく射の変換・輸送効率をさらに向上させることで,システムのさらなる高効率化が期待できるという。

また,“熱ふく射のスペクトル制御”や“熱ふく射の一方向への輸送”はSolar-TPVのみならず,未利用エネルギーの有効利用に関連して様々な分野への適用が可能な概念であるとしている。

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