神大ら,太陽系惑星リングの起源を解明

神戸大学,東京工業大学,仏パリ地球物理研究所/パリ・ディドゥロ大学の研究グループは,コンピューターシミュレーションを用いた研究に基づき,土星リング形成に関する新たなモデルを発表した(ニュースリリース)。この研究の結果は他の巨大惑星にも適用でき,土星と天王星のリング組成の違いも説明できる。

太陽系の巨大惑星は非常に多様性に富むリングをもっている。例えば観測によると,土星リング粒子は95%以上が氷から成るが,天王星や海王星のリングは暗く,リングを構成する粒子は岩石成分も多く含むことが示唆されている。しかし,こうしたリングの起源には不明な部分が多く,またその多様性の原因を説明することはできていなかった。 

研究ではかつて,太陽系外縁の海王星以遠の軌道に数千個存在していたと考えられている,冥王星サイズ(地球の約5分の1の大きさ)のカイパーベルト天体が,後期重爆撃期に巨大惑星からの潮汐力により破壊されるくらい惑星から十分近いところを通過する確率を見積もった。その結果,土星,天王星,海王星は,少なくとも数回のそのような大きな天体の近接遭遇を経験することがわかった。

次に,そのように大きなカイパーベルト天体が,巨大惑星の近傍を通過する際に惑星からの潮汐力を受けて破壊される過程を,コンピュータ・シミュレーションを用いて調べた結果,破壊されたカイパーベルト天体の初期質量の0.1~10%程度の破片が,巨大惑星周りに捕獲されることがわかった。

このようにして捕獲された破片の総質量は,現在巨大惑星がもつリングの質量を説明するのに十分だという。つまり,十分大きなカイパーベルト天体ひとつが巨大惑星のごく近くを通過し破壊されたことにより,現在の惑星リングが形成されたと考えることができる。

さらに,このモデルは土星と天王星のリングの組成の違いも説明できる。天王星や海王星は土星に比べて惑星本体の密度が大きくなっている。このため,天王星や海王星の場合には,惑星からの重力の影響を強く受ける,ごく近傍を通過するような遭遇が可能となる(土星の場合には惑星本体の密度が小さく質量に対して惑星半径が大きいため,そのようなごく近傍を通過しようとすると土星本体に衝突してしまう)。

その結果,惑星近傍を通過するカイパーベルト天体が内側に岩石核,外側に氷マントルという二層構造をもっていた場合,天王星や海王星の場合では,岩石核まで破壊・捕獲され,岩石成分も含むリングが形成される。これに対して土星の場合は通過する天体の氷マントルのみが破壊されるため,氷から成るリングが形成される。

このように研究の結果は,土星リングと天王星(および海王星)リングの組成の違いも説明できる。研究の結果は,巨大惑星のリングが太陽系の惑星形成過程の中で,自然に形成された副産物であることを示している。このため,近年多数発見されている太陽系外の巨大惑星においても,同様な過程でリングが形成されると考えられ,系外惑星の衛星-リング系に関する今後の観測が期待されるという。

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