産業技術総合研究所(産総研)の研究グループは,透明で自己修復性のある皮膜をコーティングする防曇処理技術を開発した(ニュースリリース)。
現在,めがね,ゴーグル,車両・建物用ガラス等の表面に付着した微小な水滴が引き起こす”光の散乱”や”曇り”による光透過性の低下を防ぐために,さまざまな親水性素材を用いて材料表面への防曇処理が行なわれている。
しかし,これまでの防曇処理技術では,処理された表面の耐久性が低く,一度物理的な損傷を受けると,恒久的に防曇機能を失ってしまうという課題や,皮膜の密着性が十分でないなどの問題があった。
今回,防曇機能の向上を目的とし,水溶性ポリマーであるポリビニルピロリドン(PVP)と,アミノプロピル基を表面に付けたタルクに似たフィロケイ酸塩を基本組成とするナノメートルサイズの粘土粒子(AMP-ナノクレイ)からなるゲルを皮膜としてコーティングする技術を開発した。
このゲルをガラスやシリコン,金属,樹脂などの基材上に塗布すると容易に皮膜化(PVP/AMP-ナノクレイハイブリッド膜)し,表面での水膜の形成により,基材に防曇性を付与できる。
加えてこの皮膜は,高い光学特性や自己修復性,密着性,水中での安定性,水中はつ油性(油が付着しない性質)にも優れている。また,様々な基材表面にも容易にコーティングすることができるという。
今後,企業と連携して,開発したPVP/AMP-ナノクレイハイブリッド膜の組成を使用用途や基板に合わせて最適化する。さらに,ハイブリッド膜の安全性の確認や硬度の改善,自己修復時間の短縮化,量産化に適した塗装方法の検討などの課題を解決し,3年以内に防曇処理技術を実用化することを目指すとしている。