早稲田大学は,早稲田大学中央図書館開館25周年記念事業の一つとして,一般の利用者は普段目にすることのできない中央図書館の自動書庫と,古典籍の蔵書の中でも最も人気の高い「源氏物語絵巻:四季源氏」と「敦盛絵巻」を対象に選定し,VRコンテンンツを制作した(ニュースリリース)。
専用ビュワーを使用することで,360°かつ3Dで奥行きのある映像を視聴できる。制作した動画は同大図書館で開催されるイベントにて公開の予定。
同大では立体視映像(3D)やバーチャルリアリティ(VR)をはじめとした先進映像を対象に人間工学の観点から研究を行ない,これまで3D化技術を用いた文化財の新たな鑑賞スタイルの提案・評価を行なってきた。
自動書庫のVRコンテンツ化にあたっては,360°カメラを用いて,書庫から館内へとコンベアラインを運ばれる書籍から見た景色の再現を試みた。絵巻物のVRでは,物語の世界に入り込むような,没入感の演出に取り組んだ。3D化技術を用いた360°映像の制作をはじめ,VR空間での視線の誘導や物語の進行など,実験的な制作・表現手法を導入している。
今回の研究は,本学図書館職員の有志と本学OBとのコラボレーションによって実現した。こうした文理融合・産学連携による体制によって,これまでの建築物や書物のデジタルアーカイブとは異なる,VRの特性を活かした文化財・文化施設のコンテンツを提案・実証したことが,今回の研究の主要な成果として挙げられるという。この研究が,VRの活用領域の拡大に貢献することが期待されるとしている。