物質・材料研究機構(NIMS)は,超薄膜内にナノ粒子を同心円パターン状に配列させる新技術を開発することに成功した(ニュースリリース)。この技術は,集光光学部品など光学デバイスや,電子・磁気の機能によるセンサ部品などへの応用が期待される。
ゼラチンのゼリーに金属イオンを含む水溶液を滴下すると,同心円状のパターンが自然に生成することは19世紀から知られており,発見者の名からリーゼガング環と呼ばれている。このリーゼガング環の内部には多数のナノ粒子が析出することから,ナノテクノロジーへの応用も期待されている。
しかし,実際には十分に厚いゼリーシートを使う必要があることが制約の要因の1つになっていた。薄膜のリーゼガング環の作成の試みは,多数の専門家により取り組まれてきているが,これまでのところ薄くても厚さ数ミクロン程度までしか報告がなかった。
今回,研究チームは,ナノ粒子を形成する物質をどうすれば超薄膜のゼリーシートの狭い空間内を効果的に輸送させることができるかを考察,検討し,特に低温環境を使用することや,そこでの水蒸気量を制御することにより,0.1ミクロン以下の超薄膜にリーゼガング環のナノ粒子同心円パターンを作成することに初めて成功した。
ナノテクノロジーでは,ナノ物質を創製するだけでなく,平行なライン状,同心円状など規則的な配列制御を行なうことが重要。今回開発された技術は,従来の微細加工技術では困難度が高い同心円状の配列を容易に行えるところに特色があり,光学・電子・磁気デバイスなど,さまざまな応用,展開につながっていくことが期待されるという。
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