島津製作所は,薬剤ICG(インドシアニングリーン)を励起して発生させた近赤外蛍光を撮影することでリンパ管を“見える化”し,乳がんの手術における転移診断を支援する近赤外光カメラシステム「LIGHTVISION(ライトビジョン)」を8月29日に発売し,医療用近赤外光カメラ市場に参入する(ニュースリリース)。価格は2,400万円~(税別,システム構成により異なる)。
乳がんは,国内において,女性がかかる部位別のがん罹患率が最も高く,早急な対策が求められている。乳がんの手術においてがん細胞の転移を診断するには,直径数mmのセンチネルリンパ節の位置を同定し,切除して病理診断する必要がある。
センチネルリンパ節への転移が無ければ,腋窩リンパ節の切除を省略してリンパ浮腫を防ぐことができ,術後の患者QOL(Quality of Life)の維持に繋がる。そのため,執刀医は,リンパ節の位置を正確に把握し,迅速に手術を進めたいと考えている。
このようなセンチネルリンパ節の生検において,ICGを用いた蛍光法は近年注目されつつあり,日本乳癌学会が定める乳癌診療ガイドラインにおいて昨年推奨グレードBに登録されるなど,科学的根拠があり,実践するよう推奨されている。
同社は,長年にわたって光制御技術や生体組織の蛍光イメージング技術に取り組んでおり,これらの技術を医用画像診断分野に結びつけることで乳がんの手術を始めとする臨床分野に応用できると考え,近赤外光カメラシステムの開発を進めて製品化した。