大阪大学の研究グループは,タンパク質の細胞内動態を可視化する新手法を開発することで,グルコース輸送を担う糖タンパク質GLUT4に結合している糖鎖の役割を明らかにした(ニュースリリース)。
GLUT4はその機能を阻害するとⅡ型糖尿病発症の一因となることが知られている。GLUT4は,インスリン刺激時に細胞膜に移行し血中のグルコースを細胞内に取り込むことで,血糖値を低下させる役割を担っている。
近年,GLUT4に結合している糖鎖がGLUT4の細胞内動態において,どのような役割を果たしているかが注目されていた。
研究グループは,GLUT4が細胞膜に移行したとき蛍光プローブによりGLUT4を光らせる新しい技術を開発しており,この技術を用いることで,謎とされていたGLUT4に結合する糖鎖の役割を世界で初めて解明した。
開発した蛍光プローブは,タンパク質と結合することで初めて蛍光強度を上昇させる機能を持っている。また,蛍光プローブが細胞膜非透過性であるために,細胞膜に出てきたタンパク質のみを標識することができる。
これらの機能のおかげで,細胞膜に移行したGLUT4のみを蛍光プローブにより迅速に蛍光標識し,明瞭にGLUT4の細胞膜移行痕跡を蛍光検出することができる。
これまでは,蛍光タンパク質や免疫染色などの手法を用いてGLUT4の動態解析が行なわれてきたが,細胞の中に存在するGLUT4が細胞膜へ一旦移行したことがあるかどうかの痕跡を厳密に調べることができなかった。
今後,GLUT4の膜局在化機構の解明に加え,糖尿病の発症機構の解明と新しいタイプの治療薬の開発に繋がることが期待されるとしている。
関連記事「岡山大,光でタンパク質合成を時空間的に制御」「筑波大,タンパク質のラセン発光を観測」「横浜市大,光センサータンパク質の構造を解明」