東工大,光触媒でジフルオロメチル基を分子骨格に導入

東京工業大学は,フォトレドックス触媒を活用し,適切なジフルオロメチル化試薬と水やアルコール,カルボン酸を反応溶媒に混合し,入手容易なオレフィン類から,位置特異的にジフルオロメチル基を有するアルコールやエーテル,エステルの合成に成功した(ニュースリリース)。

ジフルオロメチル基は,その構造から,脂溶性水素結合供与体,アルコールやチオールの生物学的等価体としてふるまうため,医農薬品の構造モチーフとして近年注目されている。

しかしながら,ジフルオロメチル基を触媒的に直接分子骨格に導入する手法はいまだに限られており,一般的には保護基(PG)を有するジフルオロアルキル化を行ない,脱保護を行なうことで合成されている。

このような多段階の合成法に対して,触媒的に直接ジフルオロメチル基を分子骨格に導入する手法の開発が求められている。研究グループは,医農薬品の有用な構造モチーフとされるジフルオロメチル基の有機分子骨格への新しい導入法を開発した。

フォトレドックス触媒と呼ばれる光触媒とN-tosyl-S-difluoromethyl-S-phenylsulfoximine試薬(CF2H化剤)をジフルオロメチル源として発光ダイオード(LED)を光源とした可視光(425nm)照射下,水やアルコール,カルボン酸などの酸素求核剤存在下,オレフィン類に作用させると,ジフルオロメチル基と酸素求核剤が炭素-炭素二重結合部位に対して位置特異的に付加したジフルオロメチル化合物が得られた。

従来の多段階の合成法と異なり,新触媒反応は医農薬品開発の分野で,今後,広く使われていくことが見込まれるという。開発した技術は,オレフィンの炭素―炭素二重結合にジフルオロメチル基を導入するだけでなく,同時に他の官能基(今回の反応では酸素官能基)も導入できるため,今後は多様な官能基とフッ素官能基を同時に,簡便・短工程で導入する触媒的合成法の開発とその医農薬品としての利用をめざすとしている。

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